同じ戦没者でも差別

東京新聞 2016年 8月26日 発言の欄の投稿記事から転載

 

戦争孤児の会代表 金田 茉莉 81 (埼玉県蕨市)

 

今年も終戦記念日の15日、全国戦没者追悼式がありました。ここで追悼される戦没者は、第二次大戦で戦死した旧日本軍軍人・軍属約230万人と空襲や原爆投下などで亡くなった約80万人の計310万人とされています。しかし、追悼式の参列者約5千人の大多数は戦死者遺族で占められ、私たち戦争(戦災)孤児などはほとんど出席していません。

式典に参列する遺族は都道府県が毎年選任。その際、全国各地で組織化された戦死者の遺族会の推薦などがあるため、戦死者遺族が大半を占めるようです。

戦争孤児は、空襲などで親、家族が犠牲になり子どもだけが残された子どもです。特に多いのが疎開中の孤児です。戦争中は国策により都市の小学生は地方に疎開しましたが、その間に都市が空襲に遭い、両親や家族が全滅してしまったのです。私も疎開中に東京大空襲で家族を失いました。

かつての追悼式で、戦死者の遺族代表が「私たちは国から厚い援助を受け大学を卒業して立派な社会人になりました」と御礼の言葉を述べたことがあります。一方、私たち戦争孤児は戦後、家も家族もなく、邪魔者、厄介者にされ、まともに小学校にも行けず、言葉に表せないほど辛酸をなめてきました。けれども国からは一円の援助もありませんでした。

同じ戦争犠牲者でも民間の戦災死者の遺族、孤児らは、補償、追悼、その他あらゆる面での差別、無視されてきました。人間として扱われなかったのです。私たちは追悼式典を見るたびに、悲しさ、怒りが込み上げてきます。

 

※参考 戦争孤児(日本) こちらから (HP編集部追記)