2016年

8月

11日

私の山

東京新聞 8月11日発言欄 私の山④に、たんぽぽ舎の会員Tさんがが投稿されました。素晴らしい名文なのでご紹介します。

 中学生のころ、英国の作家コナン・ドイルのSF小説「失われた世界」を夢中になって読んだ。

そこには絶滅した翼竜や恐竜などが登場し、あたかも自分がそこにいるかのごとく心が躍った。そして、いつかは「最後の秘境」と呼ばれて小説の舞台となった南米のギアナ高地に登りたいと思うようになった。そのため北アルプスなど日本の山々を登り続けた。

 定年退職後、ついにギアナ高地ロライマ山の絶壁の上に立つことができた。その時、感動で涙が止まらなかった。到達した台地には恐竜の形の奇妙な岩や川や池があり、ここでしか見られないギアナ高地3千種と言われる固有種をはじめ、食虫植物やランの花が一面に広がっていた。

 幸い天気が良く、3日間滞在。昼は植物や幻想的な地形を見て回り、夜は満天の星と天の川の下で過ごした。恐竜はいなかったが、子供のころから思い続けた「失われた世界」そのものであった。

 人生で一番幸せな時間まで、52年の長い年月が経過していた。