着情報 2021.7.21

着情報 2021.6.29

着情報 2021.2.17

 着情報 2020.6.12

11)III-3.2耐震設計方針(p47

  耐震重要度の問題点 耐震重要度分類はリスクを増している。

  施設の中に安全上重要ではない施設はない。SクラスからCクラスの

  分類は不合理だ。

 12)III-4設計基準対象施設の地盤(第6条関係)(p56

  地盤の悪さは地震多発地帯、活断層(六ヶ所断層)の真上なのだから当然。六ヶ所村の撓曲構造   により地盤はずたずた。マンメイドロック(人造岩板)の上に乗せている。

 

13)III-6外部からの衝撃による損傷の防止(第9条関係)(p67

 

 地震と津波を除いた「外部衝撃」の評価では、最も厳しいところを見ていない。 

14)III-6.2.3火山の影響に対する設計方針(p78) 

 火山の影響については、事実上火砕降下物のみしか検討していない。 

15)III-6.2.4外部火災に対する設計方針(p90) 

 外部火災評価が極めて甘い。

 16)III-6.2.5航空機落下に対する設計方針(p99) 

 あえて「対策をしないこと」をだらだらと述べる記述は、事業者と規制委の不真面目さを表す最も典型的なものと言わざるを得ない。 

17)III-6.2.6その他自然現象に対する設計方針(p102) 

 「その他の自然現象」で「過去の観測記録」に基づく対策では 不十分。 

18)III-6.2.8自然現象の組合せ(p104) 

 組み合わせに「津波」がないこと、周辺火災との組み合わせの影響評価が恣意的なことが問題である。

19)III-7再処理施設への人の不法な侵入等の防止 (第10条関係)(p106) 

 人の侵入以外にも「サイバー攻撃」がきちんと考慮されるべきである。

 20)IV-1.1重大事故を仮定する際の考え方(p140) 

 降下火砕物は除去できるとするのはあまりに現実離れしている。 

21)IV-1.2.1臨界事故への対策(p153) 

 この項で臨界事故を想定しているのは8箇所であり、それ以外は想定外であることは問題。 

22)IV-1.2.2冷却機能の喪失による蒸発乾固への対策 (p162) 

 この項では高レベル放射性廃棄物貯蔵タンクの冷却が止まり液体部分が蒸発して固体部分が固化した状態(蒸発乾固)を想定するが、タンクの損傷も起きなければセルの破損もないなど、楽観的に過ぎて重大事故対処になっていない。 

23)V 大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムへの対応(重大事故等防止技術的能力基準2.関係) (p296

  福島第一原発事故でも出来なかったことをどうやって実現するのか、法令等の整備もない。動員令を発令する権限は誰にもない。 

着情報 2020.6.09

六ヶ所再処理工場の新規制基準適合性審査パブリックコメント案  ()(2回の連載)

   誰もが疑問に思う「再処理事業の必要性」については問われていないから、とても中途半端な文章

   みんなでパブコメを出そう 6月12日まで 

   山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)   

 ◎ 原子力規制委員会は5月13日の定例会合で、日本原燃六ヶ所再処理工場が新規制基準に「適合している」とする「審査書案」まとめた。そのパブリックコメントが現在行われ、その後「決定」される見通しだとされる。 

 日本原燃は2014年1月に六ヶ所再処理工場の審査を申請おり、この「審査書案」の決定まで6年以上かかっている。

  主な論点は、原子炉等規制法の改定に伴う「新規制基準適合性審査」の範囲であり、再処理等の施設そのものの安全性を問うているわけではない。 

 さらに施設の敷地近傍の「地震動評価に与える影響が大きい」とされる断層に「出戸西方断層」だけを取り上げ、これについての事業者の主張の確認のみ行われている。 

 また、航空機落下による損傷防止について再処理の主要工程(使用済み燃料受入れ・貯蔵、前処理、分離、精製、ウラン・プルトニウム混合脱硝、高レベル廃液固化)ごとの標的面積・落下確率に関する評価から「追加的な防護措置は不要」などとしている。 

 誰もが疑問に思う「再処理事業の必要性」「成立性」については問われていないから、とても中途半端な文章に見える。

 これで再処理施設の稼働に道が開いたとされるのだが、これで諦める必要は全くない。 

 日本原燃により設定された竣工時期は「2021年度上期」(20219月末)とされているが、それが実現するとは誰も思っていないし物理的にも不可能と考えられる。 

 また、これら設備が完工しても検査にも時間が掛かる。 

 こんな審査書案では受け入れられないとの世論の力が一つの歯止めになり得るし、これらの審査内容においても日本原燃の問題点を指摘できる。 

◎ 世論形成と反対の声を強めるために、パブコメに取り組んでいきたい。(1)から(10) 

(1)I はじめに(p1)について 

 新規制基準適合性審査を受審できる状態ではない再処理路線は断念すべきだ。六ヶ所再処理工場を稼働させてはならない。 

(2)II 再処理の事業を適確に遂行するための技術的能力(p4) 

 過去24回以上の延期を繰り返し、そのほとんどがトラブルに起因するものであったことを考えると、再処理事業の技術的能力があるとは考えられない。何を持って技術的能力があるというのか具体的な証明は何も成されていない。 

(3)II-3 経験(p6) 

    規制委の言う「実績」は、運転をしてはならないことを示していると考える。

 (4)III設計基準対象施設(p11) 

 この審査の異様な一面が明らかになっている。それは「なお、臨界防止、遮蔽、閉じ込め機能等に係る規制要求は、規制要求への適合性に影響を与えないものであることを確認した。」という文章である。今回の新規制基準適合性審査においては、これらは対象外だとしているのである。

 (5)III-1再処理を行う使用済燃料の種類(冷却期間)の見直し(p11) 

 燃料体の冷却期間変更は実態を反映していない。 

(6)III-2火災等による損傷の防止(第5条関係)(p13) 

 火災対策に漏れている物がある。アーク放電火災を対象としていない。 

(7)III-2-3.(2)火災防護対象設備における

  火災の発生防止(p16) 

 記載されている内容に大きな誤りがある。 

(8)III-3.1基準地震動(p27) 

 「基準地震動」(700ガル)は過小評価。

 

(9)III-3.1基準地震動(p27) 

 重要な断層「六ヶ所断層」を無視している。 

10)III-5津波による損傷の防止(第8条関係)(p61) 

  施設に影響を与える津波想定が、事実上存在しない。 

               ()に続く 

着情報 2020.5.21

8.政府は間違いを認めて政策を転換すべき

  この新型コロナウイルス感染症が非常に危険であることを知るのは、少なくても3月以降であろう。これより早い対応は難しかったと思われる。 

 責任を負うべき者は他にもある。「豪華客船が新型コロナウイルスの培養器になっていると考える証拠が十分そろっていたにもかかわらず、世界中のクルーズ船を運行する会社は乗客で満員にして船上の人々を危険にさらし続け、新型コロナが世界に拡散し続ける一因を作っていた。」(ウオールストリートジャーナル5月5日) 

 そのうちの一隻が横浜港で大きな事件を起こしたダイヤモンド・プリンセス号である。 

 日本のコロナ対策は最初は、クラスター対策から始まった。「帰国者・接触者相談センター」を中心に感染者とその周辺を徹底して叩けば収束できると考えた。それは一定の成果を上げ、後に感染研による遺伝子解析から、初期に広がった「武漢由来」のウイルスはほぼ征圧していたことがわかたという。クルーズ船はまた別の変異をしたウイルスだった可能性があるが、これも捕捉していた。 

 ところが主に帰国者からもたらされた「欧州型」のウイルスは検疫をすり抜けて国内で感染が広がっていた。それが3月下旬から4月12日 頃にかけての感染者の急激な増加をもたらした。 

 この欧州型は武漢型とは比べものにならないほど感染力が強く、あっという間に広がった。これは欧米の感染拡大を見ればわかったことだ。 

 クラスター対策で持ちこたえている間に、帰国者を中心に感染の可能性のある海外からの入国者を2週間隔離すると共に軽症者の滞在場所を作ることと、市中感染対策としてのPCR検査体制を構築する必要があったと思う。 

 軽症または無症状なのに病院のベッドを使ってしまうと、重症患者を収容できなくなること、だからといって自宅待機をさせると家族間感染を引き起こし、あるいは数時間で重体化する変化の激しいこの病に対処しきれないことなどは、先行する海外事例を観察していれば分かることで、専門家はぞれぞれの立場から危険性を主張していた。これを差配するのは政治の役割だったのだが、残念ながら「無策」だった。 

 軽症者を収容しながら医療措置も準備するセンターが日本でも作られたのはごく最近のこと。「体育館に100人分コロナ病床設置日本財団がお台場に」(朝日新聞5月1日)。未だ運用もしていない。これだけ変化の激しい感染症対策だから、初動に失敗したことは責められない。 

 もっとも、今も失敗し続けているブラジルや米国の一部の州は責められてしかるべきだが、韓国も英仏も最初は失敗した。その後に方針を転換して医療崩壊を防ぐことに成功した。 

 しかし日本は今も、どっちを向いているのかはっきりしない。 間違いを認めて方針転換する勇気が見られない。また、政策転換をしたら朝令暮改と批判されるのは、転換する理由をはっきり示さないからに他ならない。 

 

9.集団免疫でコロナは対処できるか 

    現段階では集団免疫が解決になる保証はない   来年もオリンピックのために間違った対策を取る恐れ 1年延期したオリンピックはどうなるか。 

 希望的観測として、ワクチン開発が秋までに成功したとしても、治験を経て大量摂取が可能になるには更に1年以上かかると思う。政府は、ワクチン路線では短期決戦に合わないから、残された道は集団免疫の獲得しかないとの方針だと考えられる。集団免疫を獲得すれば、その集団に守られて非罹者のハイリスク集団の安全も守ることが出来るという考え方だ。世界でも活動縮小などをしない国がある。スウェーデンである。これに習おうとして、中途半端に取り組み失敗したのが英国だった。

 一方で、必ずしも明確ではないもののブラジルのボルソナロ大統領もロックダウンなどはせず経済活動を縮小しないとする。では、それで解決できるのだろうか。 

 「新型コロナウイルスへの抗体が仮にできたとしても、その人が複数感染する可能性がないかどうか、まだ分からない。水ぼうそうやはしかを引き起こすウイルスなどは感染後に一生免疫がつくとされるが、エイズウイルス(HIV)は感染しても通常免疫がつくことはない。 

 新型コロナウイルスの感染に対する体内の免疫反応についてはまだほとんど解明されておらず、全容が明らかになるにはしばらく時間がかかると専門家は述べている」(4月15日付ブルームバーグ)。 

 現段階では集団免疫が解決になる保証はない。免疫が持続する期間も分かっていない。「ハーバード大学の研究 チームが米科学誌サイエンス電子版で発表した論文によると、このウイルスの仲間には、カゼの原因となるウイルスや、重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスなどがあるが、カゼの場合は免疫が短期間で弱まる一方、SARSの場合は免疫が長く続くとの見方があるという。」(日経ビジネス4月28日) 

 これでは来年のオリンピックまでに解決する見通しなどない。オリンピック開催に都合が悪いから日本のコロナ対策が後手になったとしたら、来年もオリンピックを開催したいがために、間違った対策を取る恐れがあるので警戒と監視が必要だ。

 

10.そして何より優先されるべきは情報公開 

  国の無策は情報を公開したらたちまちばれる-だから政府は公開しない

 日本は情報を公開しない。なんであってもしない。説明責任も果たさない。国会で説明すると約束しても、説明しない。このウイルスは何者なのか、今のところ分からないから、そのことを 

説明しろと言っても難しい。問題はそこではなく、学校を休校するにしても、PCR検査をしないことにしても、検査スクリーニングを極めて限定していることも、まともに説明されない。 

 例えばPCR検査をしないことについては「病院のベッドをふさがないため」という指摘があった。政府からではない、医療関係者からの指摘だった。(NHK4月28日など) 

 「政府はこれまで、感染者の行動を追跡し、濃厚接触者を特定するクラスター(感染集団)対策に注力してきた。感染の有無を確認するPCR検査の対象は、保健所などの窓口が必要と判断した人に

限っていた。」「背景には、当初、日本の検査能力が不十分だったことがある。感染者用の病床も限られていたため、広く検査の網をかけて陽性者が増えれば、軽症患者らで病院があふれる事態が懸念された。」(読売新聞社説4月22日)  いずれも政府(首相)の国民への説明ではなく、報道からだった。  

 しかしこれらは先にも述べたとおり、3月末までの感染状況には対応できる体制だったが、そうやって「時間を稼いで」いる間に、軽症者・無症状者に対応できる大規模な待機所確保とセットにして検査体制を充実させるべきだったが、それが出来ない理由は説明されていない。むしろ体制を準備中との国会答弁や報道だけが虚しく流れていた。 

 情報を公開しない体質は、政権独自のものではなく日本の官僚機構そのものが内在するものだから、政治が変えなければならない。しかし情報非公開を政権維持の道具にしてきたため、何が悪いのかすら認識できなくなっていた。 

 新型コロナウイルス感染症の対応に失敗し、国内で緊急事態宣言を出さざるを得なくなった安倍政権は、その後も後手に回る対応の悪さと現場の疲弊、崩壊に対する責任は専門家会議に丸投げして実態を見ぬ ふりし、政府がすべき施策、例えば自治体がパンクする前の段階で全国に相談センターを、保健所に回さないで設置するべきだった。 

 保健所を通したため、まずここがパンクし、さらに救急搬送が断られる事態から医療に繋げない重症者が生じた。これについても情報を収集分析している気配もない。(自治体は行っているが) 

 国の無策は情報を公開したらたちまちばれる。だから公開しない。 原子力も防衛も全て同じだ。

 

 着情報 2020.5.19

6.損失補償や生活支援窓口のありかたを変えるべき 日本は欧米とは異なり強制的な都市封鎖ロックダウンは法的には行えないし新たな立法措置で作るべきでもない。 

 あくまでも新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「自粛要請」であり、それを有効に機能させるためには補償は欠かせない。 

 「自粛要請」をした東京都の小池百合子知事は4月3日の記者会見で緊急融資の申請が当初見込みの248億円から1200億円に急増したこと明らかにしているが、これは「要請に見合った対応」が求められた結果であり、当然であり、未だ足りない。 

 ところが安倍首相は「自粛要請」への「補償」は一切しないと繰り返した。名目などは何でも良いのだが、一言「保証の位置づけ」と説明して資金を提供すれば混乱は回避できたはずだ。 

 しかし今存在する各種の手続きは難解至極である。例えば助成金についても極めて難解で「小規模事業者持続化補助金」(中小企業基盤整備機構)「雇用調整助成金」(ハローワーク)など、果たして対象になるかも含めわかりにくいことこの上ない。無条件で1人一律10万円の「生活支援給付金」は紆余曲折の上で決まったが、これは市区町村への申請だ。 

 マイナンバーカードを持っていればインターネットを使って申請が出来るなどと余計な方法を宣伝したため、各地で混乱が続いている。

 例えば「暗証番号を忘れた」「カードを作りたい」いずれも直ぐに対応など出来ない市町村窓口では長蛇の列で長い待ち時間。何のための「電子申請」か分からなくなっている。これならば郵送で

文書を出したほうがはるかに早いし正確だ。そもそもマイナンバー制度そのものが、国民総背番号制を背景に税や社会保障制度を一元的に紐付け、政府が管理できる制度として作られたため、個人の権利を侵害するとして根強い反対があり、未だに基本的には行政の内部処理でしか使われていない。個人が活用できるのは僅かに確定申告を電子申告出来る程度だ。これも実はマイナンバーカードがなくても出来る方法はある。 

 国民生活にとっておよそ何ら必要もないカードを突如使えることにしたのは、国の「電子政府構想」の失敗を「このあたりで挽回しよう」という怪しい企みからだが、10万円を早く手にできるというデマ宣伝に乗って窓口に並ばされた国民こそ、いい迷惑である。 

 ちなみに総務省のITC(インフォメーション・テクノロジー・コミュニケーション…情報通信技術)予算の中の「Society5.0を支えるITCインフラ整備1,947.2億円+事項要求」では、実に1800億円以上がマイナンバーカードの普及と事業拡大予算だ。アベノマスクどころではない巨額の資金が投じられていることにも注意を向けてもらいたい。 

 なお、「事項要求」とはマイナンバーカードに紐付けられたマイナポイント事業に掛かるポイント還元予算で、これは実績支払いなので金額が入っていない。最大1人5000円とされるが、今の普及率15%に最大5000円を掛けると960億円になる。こんなバカげた制度も、決まった事業なので今年から始まる。 

 今話題になっている家賃補助についても、実は「住居確保給付金」という制度が既にある。これは事業用のものではなく個人の住居だけだ。それでも「解雇や廃業等で収入がなく家を追い出される」といった緊急時には活用できる。市区町村の生活支援窓口が担当だが、これもあまり知られていない。 

 このような状況下でこそマイナンバーなど関係なくITCを使った「ワンストップサービス」とすべきなのだが、むしろますます細分化の様相になっている。

 この他にも金融機関を通じた実質無利子融資などもあるのだが、一体何処に相談すべきか迷うだけだ。市区町村の窓口ではこのうちのごく一部しか扱えないうえ窓口もバラバラだ。 

 3.11震災時の被災者支援法制とはずいぶん様相が異なるのは、当時は災害対策の司令塔がちゃんと政府に存在したからだ。今はそれすらも存在しない。自治体の窓口もハローワークも当然ながらパンクしている。行政改革の影響で公務員数は激減し、窓口は多くが委託されており新しい事業には対応できない。そのため少ない公務員が何でもしなければならない自治体が続出している。 

 このようなものこそ、社会保険労務士や行政書士、税理士、弁護士団体に委託し、相談窓口を日本全国何千箇所もつくりワンストップで必要な申請が全部出来るようにすべきだ。 これは国と都道府県の仕事だ。

 

7.PCR検査体制の確立は急務   医療、介護現場が最優先、加えてハイリスクな人々を守るために

 やる気になり、ちゃんと態勢を整えれば、日本でもPCR検査は増やせる。フランス政府は日本製のオンラインPCR検査装置がフランスの検査体制を支えているとして、在仏日本大使館に感謝状を

 贈った。いや、なぜ外国でだけ日本製全自動PCR検査装置が存在し、使用されているのか。誰か説明して欲しいのだが、この点について納得のいく説明を聞いたことがない。 

 一定規模のPCR検査を行わなかったら実態に近い陽性率は出ない。市中感染の規模と構造が分からなければ自粛要請も解除する根拠も出てこない。 

 このままずるずる根拠薄弱に「自粛」を続ければ個人事業から崩壊していくことは火を見るより明らかだ。PCR検査は「私は感染しているか知りたい」からするのではない。多くの医療関係者が繰り返し言うとおり、医療崩壊を防ぎ重症化を防止する観点から実施しなければならない 

 今起きている最大の危機は、重症患者を入院させるベッド数が逼迫し始めていることだ。 

 さらに重症化しやすい基礎疾患等のリスクを持っている人や高齢者に感染させない取り組みが重要だが、そのためにはこれらの人々が入っている病院や施設で感染を発生させない努力が重要である。

  つまりPCR検査体制は医療、介護現場が最優先で、加えてハイリスクな人々を守るために使うべきである。 

 また、発熱や倦怠感などの症状を自覚した段階で、できる限り検査し、陽性者を一般病院に行かないようにする対応も必要だ。それをしないから医師や看護師が感染する。呼吸器系疾患で救急車を 

呼んでも、受け入れる病院がないという事態さえ発生するのは、医療側の自己防衛だ。これもまた検査されていない弊害だ。 

 これらを実現するためには、保健所の「帰国者・接触者相談センター」を窓口にする体制では持たないのは誰が見てもわかる。直ぐに直接検査に繋がる「発熱外来」または「集中検査センター」 

が必要だったのだ。今になってようやく設置する動きが進んでいるが、世論の圧力が一定の功を奏したのであろう。しかしこれも使い方を誤れば、この作業をする人々がパンクしてしまう。人手で行う限り、検査実数は現状以上増やすことは難しいだろう。熟練者は無限にいるわけがない。 

 安倍首相が答弁する度に倍々に増える(50001200020000増えていった)検査件数など、あり得ないというほかない。今の体制では現状の9000件程度が限界なのだ。なのでこんどは抗体検査を導入するなどと言い始めているようだが、これは別の観点からの検査であり、同一視することは危険だし無意味である。 

 秋にも第二波が来るだろう。立て直しは急務だ。 検査拡大を実現した実例は世界中にいくらでもある。それに学べ。 (その4)に続く

 着情報 2020.5.17

4.日本でのコロナ感染の特徴 PCR検査の実施件数が少ない国民の衛生管理意識の違い 

 日本では公表される感染者数が諸外国に比べても少ない。日本への出入りの多さからは奇妙なことだが、その理由の1つはPCR検査の実施件数が少ないからだ。 

 しかし一方で、そうそう隠せない「死者の少なさ」「医療施設に搬送される重症患者の少なさ」は確かに存在する特長だ。 

 「超過死亡者」のデータを見ると過去の感染症流行特にインフルエンザの流行に伴う肺炎死者数の増加が、他の年に比べて2月初旬が高く、その後急速に低下している傾向が見られる。 

 実際には新型コロナウイルス感染症とはカウントされていない死者があり得るとは思う。しかしそれが何千人にもなることは考えられない。(多く見積もっても100人ほど) 

 そうなると日本が他の欧米諸国に比べて重症化する人や死亡者が少ないのかを説明しなければならないが、その理由は今の段階ではよくわからない。 

 ワイドショーなどでは「結核ワクチンのBCG接種によって自然免疫が鍛えられた」などという説もあるが、それはどうだろうか。 検証の価値はあると思うが根拠に乏しい。むしろそんな話題で大人が今さらBCG接種に走る方が危険である。むしろ、日本と諸外国で最も大きな違いは衛生管理意識の違いだ。こちらのほうがありそうなことだと思う。 

 日本ではこの季節、インフルエンザの流行と花粉症が重なる。そのため特に都市部では半分近い人がマスクを使用し、手洗いや消毒に気を使う。また、日本の習慣は土足のまま家には入らない。必ず三和土(たたき)靴を脱ぎ、コートなども脱ぐことが多い。花粉症の人は特に気を使い玄関の外で脱いで叩き、家には畳んで持ち込む人も多い。これらは新型コロナウイルス感染症対策にも有効だ。 

 マスクは感染症防止には役に立たないと初期にはWHOが言った。しかし「人に感染させない」効果は高い。これが感染爆発を抑制した効果は大きいだろう。 

 日本の感染者の多くは無症状か軽症なので、重症化する患者を早期発見して治療できる態勢を構築するのは戦略として間違ってはいないが、日本の病院や老健施設で起きている院内感染や施設内クラスターの発生は、基本的対策に失敗したことが原因だ。これについて施設側を責めるのは酷だ。外来者全部が感染者だとの想定で対処することは、日頃の狭隘さと混雑状況や人手不足で、よほど恵まれ

 たところでもなければ難しい。それに加えて検査件数の極端な不足は、誰が感染しているかも分からないままに搬送される状況さえ生み出している。 

 その責任はクラスター叩きにのみ資源を集中し、市中感染が確認されてもなおそれに拘った政府の対策にある。 

 

5.COVID-19は生物兵器? 

 COVID-19が生物兵器として開発されたとの出所不明な情報がネットで飛び交っている。米軍が作った、中国軍が作ったとの「説」である。 実態はどうなのか。

 少なくてもまともな論文では、COVID-19が人工生成物であるとの主張は否定されている。ネイチャーメディスン3月17日付けの論文だ。 

 ここでは実験室での遺伝子組み換えにより生成した可能性はほとんどないとし、このウイルスについて「2つのシナリオを提案します。

(i)人 獣共通感染での動物宿主における自然淘汰(自然発生的遺伝子組み換え)。 

(ii)人畜共通感染後のヒトの体内での自然淘汰」として発生原因を考察している。 

 「広東省に不法に輸入されたマレーのセンザンコウ」が有力と見ている。 

 また、この論文では「誤って実験室から放出された可能性を検討」している。 

 そこでは、このウィルスには培養された形跡が見たらならないことや「証拠はこのウイルスが意図的に操作されたものではないことを示している」ことを説明している。 

 この論文の著者は米英の大学などの研究者である。 

 一本の論文だけで結論づけるのは早計だと思われるかも知れないが、生物兵器であることを示す論説は全て状況証拠のような話ばかり。いまのところ実証したものは一つもない。(その3)に続く 

 着情報 2020.5.16

.新型コロナウイルス感染症

 早期対処に成功した台湾 大規模検査体制で感染を封じ込めた韓国

 日本は初動対応に遅れ   (その1)(4回の連載)

  山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 

見出し紹介

1.早期対処に成功した台湾

  ・蔡英文政権に能力のある人材がいた

  ・意志決定から実行までの仕組みが整理されていた

  ・過去の感染症の経験が生きていた

2.大規模検査体制で感染を封じ込めた韓国

  ・軽症、無症状者の待機場所を確保、

   重症者のみを医療施設に送る

3.日本は初動対応に遅れ

4.日本でのコロナ感染の特徴 PCR検査の実施件数が少ない

  国民の衛生管理意識の違い

5.COVID-19は生物兵器?

6.損失保証や生活支援窓口のありかたを変えるべき

7.PCR検査体制の確立は急務

    医療、介護現場が最優先、加えてハイリスクな人々を守るために

8.政府は間違いを認めて政策を転換すべき

9.集団免疫でコロナは対処できるか

    現段階では集団免疫が解決になる保証はない

    来年もオリンピックのために間違った対策を取る恐れ

10.そして何より優先されるべきは情報公開

  国の無策は情報を公開したらたちまちばれる-だから政府は公開しない

 「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)パンデミックCOVID-19が、人から人への感染を引き起こすことが確認されたのは1月18日、最初の死者が中国で報告されたのは2月3日。漢で感染爆発が起こるのは1月21日ごろ。この時点までは世界では、脅威の実態は見えていなかった。 

 

1.早期対処に成功した台湾

  ・蔡英文政権に能力のある人材がいた

  ・意志決定から実行までの仕組みが整理されていた 

  ・過去の感染症の経験が生きていた 

朝日新聞4月11日の記事で、昨年末、新型コロナウイルス感染症について台湾がWHOに対し「中国・武漢で特殊な肺炎が発生し、患者が隔離治療を受けている」との情報を伝え、警戒を呼びか   けていたと報じていた。当時は誰も知らなかったし、この段階では、誰も今日を予想することは出来なかった。従って、昨年から対策を準備することは台湾以外では困難だったと思われる。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の経験も乏しい日本では、想像することは難しいが、WHOが台湾の 情報を生かしていれば、感染拡大に早く対処できたとの陳時中・衛生福利部長(大臣)の指摘は日本にも当てはまる。

これに素早く対処できたのは、蔡英文政権に能力のある人材がいたことと、意志決定から実行までの仕組みが整理されていたこと、過去の染症の経験が生きていたことが挙げられている。

 

2.大規模検査体制で感染を封じ込めた韓国 

  ・軽症、無症状者の待機場所を確保、重症者のみを医療施設に送る 

韓国では文在寅大統領が緊急事態宣言を行ったのが3月23日。「ウイルスの蔓延は危険な段階に達しており、今後数日間は非常に重要となる」と語った。この時点での感染者数は556人で死者は5人だった。韓国では日本同様都市のロックダウンは行っていない。しかしGPSの位置情報を使った個人行動記録を駆使しての感染拡大対策が取られていた。これは日本では不可能な取り組みだったであろう。しかしもう一つ重要な対策があった。医療崩壊を回避するため、大規模なPCR検査と軽症、無症状者の待機場所をいち早く確保し、重症者のみを医療施設に送る体制が整っていた。PCR検査の数だけでも日韓では10倍の開きがある。これでは日本では検査体制からの対策を構築しようがない。韓国の場合も過去の経験に学んでいた、3月4日にいったんは収束宣言をした韓国政府が、大邱で発生した宗教団体の感染爆発に対し素早い立て直しに成功し再度感染を抑えたことも重要である。

 保守派が政府の自粛要請を拒否して大規模集会を開き政権批判を展開したのに対し、文政権の与党「共に民主党」は4月の総選挙で300議席中180議席を獲得した。1987年の民主化以降、総選挙で単独の政党が獲得した議席は150議席余りが最多だったから、歴史的大勝をしたのも対策に成功したからだ。(ニューズウィーク4月20日) 

しかし徴兵制があり国民主権が制限され、朝鮮戦争「休戦下」で戦時体制にすぐに移行することが可能な国と日本で同じことは出来ないし、するべきでもない。良い点は取り入れ、悪い(合わない)点は真似しない。それだけのことだ。 

 

3.日本は初動対応に遅れ日本で初めての死者が確認されたのは2月13日。神奈川県の80代 

女性で渡航歴はなし。1月22日に倦怠感を感じ、28日に受診したが医師から経過観察を指示された。しかし容体が悪化したため、再検査で肺炎と診断され別の医療機関に入院。2月6日にはさらに転院し、12日になって始めて検査を受けたが、翌13日に死亡した。その後、陽性が判明している。 

   (朝日2月13日) 

その後の14日の政府対策本部で、ようやく専門家会議を新たに設置し対応強化の方針が首相から明らかにされた、外務大臣により渡航中止勧告地域の拡大が発表された(ブルームバーグ2月14日)緊急事態宣言は、ほぼ2ヶ月後の4月6日だった。 

驚くことに日本は一切何処の国の対策とも異なる道を歩んでいる。「独自路線」と政府は言うが、学ぶ能力も気力もないのだと思う。封じ込めに成功した台湾や韓国あるいはニュージーランドの初期対応を冷ややかに見つめて「何もしない」のが日本だ。

せめて遅きに失したとはいえ渡航制限や入国者の検疫くらいは真面目にしていたのかというと、実態は何もしていない。マスコミもクルーズ船のドタバタ対応に目を奪われ、国内医療体制の構築遅れや「帰国者・接触者相談センター」の脆弱さ(保健所ははじめからパンクしていた)や無症状感染者の入院、滞在施設の不存在などには気がついていない。 

 韓国では3月2日の段階で、病院とは別の隔離施設で軽症者の受け入れを開始した。それが「生活治療センター」であり延べ1万人以上を収容し、病院ベッドへの集中を回避した。(ニューズウィーク) 

 これに対して日本は優先診療(トリアージ)さえまんぞくに出来ず、重症者を医療に繋げられないまま犠牲者を出しただけでなく、軽症や無症状感染者を管理できずに犠牲者が出た。これは大失態である。現在も体制は十分ではない。なにしろ特に都市部では電話回線がパンクしており保健所に電話が繋がることさえ難しいのである。日本財団は船の科学館と旧つくば研究所(茨城県つくば市)の跡地内に一時滞在施設を建設中だ。韓国のそれと同様に1万床を目指しているが、これは人件費を含めて全額日本財団の資金で行われており政府の予算は付いていない。(東洋経済4月7日) 

これが日本の対策の実態だ。(その2)に続く 

着情報 2020.1.23 

東京電力による日本原電への2200億円援助は理不尽

 東京電力に原電支援をさせない方法地方自治体への働きかけを強めることから 

東海第二原発再稼働を認めない世論形成を続けていきたい

 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

◎ 日本原電への資金支援は、規制基準適合性審査において明文化された1740億円ではなく、特定重大事故等対処施設610億円を含む「安全対策費用を含め」3500億円に膨れ上がった。

 このうち約8割に相当する2900億円を東京電力と東北電力が負担すると報じられた。東京電力は2200億円、東北電力は600億円相当になるものと見られるが、具体的な数値は一切明示されていない。

 報道された数値についても東京電力は確認を拒否し続けている。

 なお、残った2割、約700億円は関電、中電、北陸電力が負担すると考えられている。

◎ 東京電力以外は、債務保証になるものと見られるが、東電だけは債務保証が何処の金融機関も受け入れないため、電気料金の前払いになる。

 これについては東京電力は認めているので、この先何年間か、受電する見込みでキロワット単価を受電見込み電力に掛けて、前払いをおこなうと考えられている。

  東京電力はこれまでも2011年から2018年度まで1kWhも受電していない日本原電に3728億円もの巨額な資金提供をしてきた。 これは「設備維持管理契約に基づく基本料金」(*)である。

なお、原電に支払う料金には「従量電力量料金」があるので、これを加えて「卸売電力量料金」としている。

  この料金の内、「従量電気料金」分について「前払い」することにより「資金提供」を行うこととしたのである。

  *東京電力はこれを「プラントの安全維持ならびに再稼働および廃止措置、いずれにも必要な最小限の費用に限定した金額を、安全の確保を最優先に、その妥当性を原子力部門等で精査し、議論を行ったうえで契約しており」としている。

  料金の支払い契約は複雑化していて、2016年以降は東電EP(エナジー パートナー・電気ガス小売会社)が基本料金を払っている。

  一方、東電PG(パワーグリッド・発送電会社)が「バックエンド過去分(使用済燃料再処理等既発電費)を託送回収の上、発電事業者へ支払うことが適当とされていることから、費用を負担」しているとし、原電へ支払っている。

 おそらく「東電PGから原電への4.84億円の固定支払額」がそれに相当する。これも原電の原発費用である。

  今後、資金支援として前払い料金を支払うとすれば「東電EPとしては、買電契約において電気を受電するための対価を支払って」いるので、日本原電に対して前払い料金は東電EPが支払うことになるという。

  これらの決定については、唯一公表されたのが「1028日に東電HD(ホールディングス)の取締役会で決定」との記者会見での永澤昌常務取締役による口頭での説明だけだ。

 3500億円に上る東海第二原発への資金支援について、およそ2200億円もの費用を負担することを決定したのは東電HDだが、それを実際に支払うのは東電EP。そこに丸投げした形であるが、東電EPも株式会社(100%東電子会社)だから、意志決定は取締役会でなされたはず。

 ところが東電原子力センターは市民との話し合いで「いつ、いかなる決定を東電EPが行ったかは経営上の秘密」として回答を拒否した。

記者会見等での同様の質問も回答を拒否しているようだ。

  東電株主による違法行為差し止め訴訟の原告は『東電HD株主の

声を届かせないための究極の脱法行為と言えるでしょう。会社分離のテクニックの離れ業です。

「桜を見る会」における、黒を白と言いくるめる逃れ手口がここでも。』と9月19日の第一回口頭弁論の後に開かれた記者会見で批判している。

  『日本原子力発電の村松衛社長は9日、水戸市内で記者団の取材に応じ、2021年3月までの予定で進めている東海第二原発(茨城県東海村)の安全対策工事について「期限までの完成は難しいと判断

している。工程の見直しも含めて検討したい」と述べた。

ただ、工事終了時期の見通しに言及しなかったものの、工事の遅れが再稼働時期に影響はしないとの考えも示した。』        (毎日新聞1月8日)

東京電力に原電支援をさせない方法…都庁へ働きかける◎ 東京電力は資金支援の方法として「電気料金の前払い」をおこなうこととした。その支払いを東電EPが行う。その決定を誰が、何時したのかを問うたら、それは経営上の秘密事項だとして回答しなかった。

 つまり抜け道として分社化した東電EPを使っている。東電経営陣の責任を追及された場合の逃げ道だ。それを許してはならない。

◎ 東電HDの大株主は東京都。これに対して東電の資金支援を認めないよう働きかけることは重要だろう。

 また、東電との関係としては、株主になっている地方自治体もあるので、それに対しても働きかけることは意味があることだ。

 また、東海第二原発の避難計画を作るのは地方自治体であり、避難先とされているのも地方自治体だから、双方に対して事故時の影響、本当に避難できるのか、するのか、避難者を受け入れることが

出来るのか、生活を維持し被災者への十分なケアが出来るのかが

問われる。

◎ 自然災害ですら不十分な避難態勢に対し厳しい指摘が続いている。

まして人災である原子力災害に巨額の税金を使い多くの職員を動員するなど論外であろう。

 自然災害と一緒に起きた場合の悲惨な状態を考えるならば、そのような防災計画を作ることも躊躇し、拒否すべきことではないのか。

 これらをも含め、地方自治体への働きかけを強めることから、再稼働を認めない世論形成を続けていきたい。    (初出:月刊たんぽぽニュース、2020年1月号No289)

着情報 2020.1.23 

東京電力による日本原電への2200億円援助は理不尽

 東京電力に原電支援をさせない方法地方自治体への働きかけを強めることから 

東海第二原発再稼働を認めない世論形成を続けていきたい

 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

◎ 日本原電への資金支援は、規制基準適合性審査において明文化された1740億円ではなく、特定重大事故等対処施設610億円を含む「安全対策費用を含め」3500億円に膨れ上がった。

 このうち約8割に相当する2900億円を東京電力と東北電力が負担すると報じられた。東京電力は2200億円、東北電力は600億円相当になるものと見られるが、具体的な数値は一切明示されていない。

 報道された数値についても東京電力は確認を拒否し続けている。

 なお、残った2割、約700億円は関電、中電、北陸電力が負担すると考えられている。

◎ 東京電力以外は、債務保証になるものと見られるが、東電だけは債務保証が何処の金融機関も受け入れないため、電気料金の前払いになる。

 これについては東京電力は認めているので、この先何年間か、受電する見込みでキロワット単価を受電見込み電力に掛けて、前払いをおこなうと考えられている。

  東京電力はこれまでも2011年から2018年度まで1kWhも受電していない日本原電に3728億円もの巨額な資金提供をしてきた。 これは「設備維持管理契約に基づく基本料金」(*)である。

なお、原電に支払う料金には「従量電力量料金」があるので、これを加えて「卸売電力量料金」としている。

  この料金の内、「従量電気料金」分について「前払い」することにより「資金提供」を行うこととしたのである。

  *東京電力はこれを「プラントの安全維持ならびに再稼働および廃止措置、いずれにも必要な最小限の費用に限定した金額を、安全の確保を最優先に、その妥当性を原子力部門等で精査し、議論を行ったうえで契約しており」としている。

  料金の支払い契約は複雑化していて、2016年以降は東電EP(エナジー パートナー・電気ガス小売会社)が基本料金を払っている。

  一方、東電PG(パワーグリッド・発送電会社)が「バックエンド過去分(使用済燃料再処理等既発電費)を託送回収の上、発電事業者へ支払うことが適当とされていることから、費用を負担」しているとし、原電へ支払っている。

 おそらく「東電PGから原電への4.84億円の固定支払額」がそれに相当する。これも原電の原発費用である。

  今後、資金支援として前払い料金を支払うとすれば「東電EPとしては、買電契約において電気を受電するための対価を支払って」いるので、日本原電に対して前払い料金は東電EPが支払うことになるという。

  これらの決定については、唯一公表されたのが「1028日に東電HD(ホールディングス)の取締役会で決定」との記者会見での永澤昌常務取締役による口頭での説明だけだ。

 3500億円に上る東海第二原発への資金支援について、およそ2200億円もの費用を負担することを決定したのは東電HDだが、それを実際に支払うのは東電EP。そこに丸投げした形であるが、東電EPも株式会社(100%東電子会社)だから、意志決定は取締役会でなされたはず。

 ところが東電原子力センターは市民との話し合いで「いつ、いかなる決定を東電EPが行ったかは経営上の秘密」として回答を拒否した。

記者会見等での同様の質問も回答を拒否しているようだ。

  東電株主による違法行為差し止め訴訟の原告は『東電HD株主の

声を届かせないための究極の脱法行為と言えるでしょう。会社分離のテクニックの離れ業です。

「桜を見る会」における、黒を白と言いくるめる逃れ手口がここでも。』と9月19日の第一回口頭弁論の後に開かれた記者会見で批判している。

  『日本原子力発電の村松衛社長は9日、水戸市内で記者団の取材に応じ、2021年3月までの予定で進めている東海第二原発(茨城県東海村)の安全対策工事について「期限までの完成は難しいと判断

している。工程の見直しも含めて検討したい」と述べた。

ただ、工事終了時期の見通しに言及しなかったものの、工事の遅れが再稼働時期に影響はしないとの考えも示した。』        (毎日新聞1月8日)

東京電力に原電支援をさせない方法…都庁へ働きかける◎ 東京電力は資金支援の方法として「電気料金の前払い」をおこなうこととした。その支払いを東電EPが行う。その決定を誰が、何時したのかを問うたら、それは経営上の秘密事項だとして回答しなかった。

 つまり抜け道として分社化した東電EPを使っている。東電経営陣の責任を追及された場合の逃げ道だ。それを許してはならない。

◎ 東電HDの大株主は東京都。これに対して東電の資金支援を認めないよう働きかけることは重要だろう。

 また、東電との関係としては、株主になっている地方自治体もあるので、それに対しても働きかけることは意味があることだ。

 また、東海第二原発の避難計画を作るのは地方自治体であり、避難先とされているのも地方自治体だから、双方に対して事故時の影響、本当に避難できるのか、するのか、避難者を受け入れることが

出来るのか、生活を維持し被災者への十分なケアが出来るのかが

問われる。

◎ 自然災害ですら不十分な避難態勢に対し厳しい指摘が続いている。

まして人災である原子力災害に巨額の税金を使い多くの職員を動員するなど論外であろう。

 自然災害と一緒に起きた場合の悲惨な状態を考えるならば、そのような防災計画を作ることも躊躇し、拒否すべきことではないのか。

 これらをも含め、地方自治体への働きかけを強めることから、再稼働を認めない世論形成を続けていきたい。    (初出:月刊たんぽぽニュース、2020年1月号No289)

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┗■1.あまりに酷い伊方3号機

 |  再稼働直前に故障する原発-川内(九州電力)も高浜(関西電力)も

 |  伊方(四国電力)も…

 |  規制庁の甘い審査-規制庁交渉で痛感したひどい回答、

 |  特に原子炉の安全性

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)あまりに酷い伊方3号機

 

 四国電力伊方原発3号機が12日に原子炉を起動した。プルトニウム燃料

(MOX燃料)を積んだプルサーマル炉でもある。

 8月9日長崎原爆の日に再稼働阻止全国ネットワークが規制委と交渉を

持ったが、その結果、一般とも科学ともかけ離れた認識に唖然とさせられ

た。これまでも何度も議論をしたが、今回は最も強くそれを感じることに

なった。担当した箇所での質問と回答に対し、特に原子炉の安全性に関す

る点についての批判を以下に述べる。

 

見出し

1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい

2.1000ガルに耐えられる?

3.マジックナンバー1.54倍

4.自然循環不成立時の過酷事故対策

5.注入圧力はわずか7気圧

 

 

1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい

 

 原子炉一次系に破損が発生すると流出する冷却材の流れに阻害されて自

然循環は成立せず燃料を冷却できないことは明確である。炉内の冷却材は

開口部に向かって流れてしまうからだ。

 自然循環は炉心燃料の熱により発生し、高温になった冷却材は出口配管

を通過して蒸気発生器に向かい、そこで二次系または空気(二次系が蒸発

していれば)により冷却されて比重の大きな冷却材になるので、蒸気発生

器細管を下り一次冷却材ポンプを経て入口ノズルから原子炉内に戻る。こ

れが自然循環の流れだが、何らかの原因により蒸気発生器細管、加圧器、

一次冷却材ポンプなどの何処か(計装系などの微少配管なども含めて)で

漏えいが発生したら漏えい口から冷却材は噴出し、冷却材の流れは損傷部

に向かう一方的なものになる。

そのため自然循環は成立しない。

 

 その中でも漏えい箇所になる可能性の高い一次冷却材ポンプは、実は破

損が全くなくても電源が喪失しただけで漏えいが発生するやっかいな装置

である。

 ポンプには「シール部」という場所がある。ポンプ回転軸を伝って内容

物が漏れるのを防ぎ、軸受を安定させる装置だ。加圧水型軽水炉の一次系

にはループごとにポンプがあるので、伊方3号機の場合は3台ある。

 そのシール部は外から強い圧力をかけて「軸封水」または「シール水」

を押し込んでおり、そのおかげで隙間から冷却材が漏れるのを防いでいる。

この水圧は炉圧より高く157気圧以上で「充てんポンプ」というポンプに

より圧力がかけられている。しかし電動ポンプだから電源喪失と共に機能

喪失する。

 

 機能を喪失するとシール水を押し込めなくなり、内部の157気圧の冷却

材が漏れてくる。最大漏洩量は最も圧力が高い漏えい初期段階でポンプ

1台あたり毎時最大109トンと想定されている。(時間と共に圧力が下が

るので漏洩量は徐々に減少する。)

 シールの破損は、この漏洩量を増やす方向に影響すると思われるので、

真剣に検証をすべきなのだが、今回の漏えいが「シール水のみの漏えい」

だとして、何の検証も検討もしていない。安全側に立った態度とは到底い

えないのである。

規制庁は自らは事故原因調査もしていない。

 

 四国電力によると、格納容器耐圧検査において使用圧力の1.1倍をかけ

たところ、ポンプ軸封部のOリングに外部から圧力が掛かり変形、そのま

ま動かしたため軸受が傾き漏えいに至ったというのだが、これだとポンプ

3台とも起きない理由の説明にならない。個体差だと四国電力は言ったそ

うだが、それで済むのならば規制庁などいらない。原因と調査がいいかげ

んだと、全く予期しない原因があっても排除されていないので、運転中に

大規模な破たんを来しても未然に防げない。そのような事例は過去にいく

らでもあったではないか。

 

 典型的例を一つあげれば、軸振動の増大を甘く見て再循環ポンプを破壊

するまで運転し続けた福島第二原発3号機の事故がある。その前年に同型

機の1号機で起きていた損傷を見逃したことが、最終的に事故を未然に防

げなかった。

 こんな経験を山のようにしているのに、今回の規制委の稼働許可は、何

が起きても教訓にさえならない現実を見せつけている。

 電源喪失時には一次冷却材ポンプが冷却材喪失の大きな流出点になると

分かったのは福島第一原発事故の教訓である。それまでは抽象的には認識

されていたが、そもそも全電源喪失が長時間続くという想定そのものが

「想定外」なので、実態として対策されていない。

 

 では、福島第一原発事故後の今はどうなったのかというと、本質的には

何ら変わりはしない。

 ポンプはもちろん以前のままだし、冷却材喪失対策が、結局は消防車の

ポンプという。せめて炉圧と同じ圧力でも注水できる電源不要のシステム

を付けるべきであるが、対策は取られないままに加圧水型軽水炉が動き出

している。

 一つの方法は、沸騰水型軽水炉の原子炉隔離時冷却系統と同様の装置を

付けることだ。

 

 

2.1000ガルに耐えられる?

 

 愛媛県は、伊方3号機が中央構造線及び中央構造線断層帯のほぼ真上に

あることから、650ガルの基準地震動に大きな不安を感じたのであろう、

1000ガルの地震にも耐えられるのかと四国電力に問うた。そこで四国電力

は実力はもっとあるとして1000ガルを想定した「伊方発電所3号機耐震裕

度確保に係る取組みについて」と題する報告書を2015年7月付で県に提出

した。

 この、いわゆる「実力評価書」について8月9日に規制庁に問うた。

工事計画認可申請の計算とかけ離れた文書に、いったいどんな意味がある

のかと。

 

 1000ガルとは単純計算ならば、基準地震動の1.54倍の揺れになり、ただ

でさえ厳しい蒸気発生器細管や各種管台などが、そのままでは破損するの

ではないかと疑問を持つのは当然だ。

 ところが四国電力は、工事計画認可申請書にはない「実力評価」を持ち

込み、大きな揺れの力にも耐えきれるとする。実力評価とは「適用実績の

ある詳細評価」と記載しているが、実態は安全余裕をはぎ取り、実際に

取り付けている材料や、材料の強度評価や設置状況を組み込んで加算し、

耐震裕度を上方修正したものである。

 

 一見合理的に見えるが、材料欠陥や老朽化、あるいは設計、施工ミスな

どは一切考慮できないので、実力といいながら実態は計算上のカタログス

ペックでしかない。

 工事計画認可申請において厳しい計算条件を付けるのは、設置後に何十

年、場合によっては60年間も使う装置や配管類が、稼働中に老朽化しひ

び割れや減肉が起きたり、工事や施工に問題があって傷が付いていたり、

ありとあらゆ

る「不測の事態」を想定するからである。

 航空機の場合、空力強度計算だけで製造しても耐空証明と型式証明

(これがなければ乗客を乗せられない)を取れないのは、試験飛行などで

分かる欠陥が潜んでいる危険性を経験的に知っているからだ。

 

 

3.マジックナンバー1.54倍

 

 「1000÷650」これが1.54である。

 設置許可変更申請書において伊方3号機は650ガルを想定した。新基準適

合審査にあたり、基準地震動を570ガルから650ガルに引き上げたのだ。

 それでも不安だとした愛媛県が更なる対策を求めた。つまり1000ガル程

度にも耐えられるのかと問うた。これに四国電力は「耐えられる実力があ

る」と主張した。

 

 その根拠として四国電力は、650分の1000は1.54だから、1.54倍以上の

「裕度」があれば良いことにした。しかし工事計画認可申請書に書かれた

耐震裕度の中には、そのままでは1.54倍に達しない装置や機器類がいくつ

もあった。これでは1000ガルには耐えられないとの結論になる。

 そこで「実力評価」の出番である。計算根拠をいろいろ都合よく変える

ことで耐震裕度すなわち倍率に下駄を履かせたのである。

 工事計画認可申請の場合は、例えば材料の肉厚は「必要最小肉厚」で計

算する。設計製造時の材料の厚さが、運転中の腐食や浸食で失われ、ある

いはひび割れていても設計上許容される最小値になっているとして計算す

る。

 

 もちろん、そこまで減肉やひび割れが起きていることは、特に放射性物

質を内蔵する一次系では希かもしれない。しかし希でもあり得ることだか

ら、安全側に値を取り、それでも放射性物質を封じ込めることが出来るこ

とを条件としている。これが「工認の手法」である。

 

 しかしこれでは厳しい結果になるので、「実力評価」では、肉厚は公称値

つまり材料として納品されるカタログスペックの値を使う。もちろん使用

中の減肉やひび割れなど想定しない。

 当然ながら裕度は高い値になる。例えば蒸気発生器伝熱管の場合、650

ガルにおける「工認の手法」では基準地震動による発生応力値÷評価基準

値(塑性変形[そせいへんけい]は起こすが破壊には至らない一定の値)=

1.09倍(1.54倍以下)が、「実力の手法」では同じ計算で1.61倍(1.54倍以

上)になるのである。

 

 当然、1000ガルを想定しても「実力の手法」ならば余裕があることにな

る。例えば蒸気発生器伝熱管の例では1.61÷1.09=1.48倍ほど耐震裕度

が増えるというわけだ。

 しかし「工認の方法」で計算すると0.7倍(1.09÷1.54=0.71)程度でしか

ない。これは破壊を意味する。

 

 すなわち蒸気発生器伝熱管は1000ガルの揺れには持たないのである。

 同様に持たなくなる装置類を四国電力の「伊方発電所3号機耐震裕度確

保に係る取組みについて」から読み取ると次の通り。

 抽出条件は、主要機器の中で「工認の方法」で計算し耐震裕度が1.54倍

を下回るものである。

 

 1.原子炉容器の管台(どこだか不明)、2.炉内構造物(ラジアルサ

ポート)、3.燃料集合体(制御棒案内シンブル)、4.原子炉容器支持構

造物埋込金物(スタッド)、5.蒸気発生器(管台)、6.蒸気発生器内部

構造物(伝熱管)、7.蒸気発生器支持構造物(支持脚)、8.蒸気発生

器支持構造物埋込金物(支持脚埋込金物コンクリート)、9.一次冷却材

ポンプ(軸受)、一次冷却材ポンプ支持構造物埋込金物(上部支持構造物

埋込金物基礎ボルト)、10.制御棒クラスタ(被覆管)、11.制御棒クラ

スタ駆動装置(タイロッド)、12.燃料取替用水タンクポンプ・原動機

(軸位置)、13.使用済燃料ラック(溶接部)、14.原子炉格納容器本体

(胴部)、15.アニュラスシール(根太)、16.格納容器排気筒(本体)、

17.タービン動補助給水ポンプ・駆動用タービン(弁箱)、18.その他配

管・サポート(具体的部位不明)、19.一般弁(具体的部位不明)、

20.主蒸気隔離弁操作用電磁弁(据付位置)、21.主蒸気安全弁(据付位

置)、22.制御棒(挿入性)、23.静的触媒式水素再結合装置(本体)

 

 これらが全て1.54を下回っているので1000ガルの揺れには耐えられな

いことになる。そのため実力評価などと下駄を履かせる手法を導入したが、

それで強度が上がるはずもない。

 規制庁の加圧水型軽水炉担当官は、この実力評価については法律で定め

られたものではないし、国に対して審査を求めたものでもないので、関知

していないとした。事業者がことあるごとに主張する「国のお墨付き」は、

「実力評価」については一切無いのである。

 

 

4.自然循環不成立時の過酷事故対策

 

 過酷事故対策(アクシデントマネジメント略してAM)の一つが「フィ

ードアンドブリード」つまり「減圧して注水」である。一次系の熱を逃が

す方法は二次系への熱の伝達だが、電源喪失状態ではポンプは動かないか

ら、炉心燃料で暖められた高温の冷却材が蒸気発生器の伝熱管に流れ込

み、そこで二次系の水または空気に熱を逃がし、炉心に戻ることで炉心

を冷やす。しかし伝熱管に気体が溜まれば自然循環は止まる。燃料が損

傷したりメルトダウンしたら大量の希ガスと水素が発生するから、気体

により自然循環は止まるのは誰にも分かる。

 

 その際に「フィードアンドブリード」を行うのだが、加圧器逃がし弁を

開けば自動的に冷却材喪失になってしまう。

 また、蒸気発生器の伝熱管に気体が溜まるほど炉心損傷が進んでいれば、

高温のガスがポンプシールや弁を破損させている可能性が高い。冷却材の

喪失はそういうところでも進行している可能性がある。

 

 問題は「水を入れる方法」である。

 ECCSは蓄圧注入系以外は電動ポンプを使うため、電源喪失状態では

入らない。蓄圧注入系も40気圧程度に下がらなければ入らない。高圧で漏

えいが続くような状態では、冷却材を喪失し続けていても補充は出来ない。

 

 原子炉が高い圧力のままで推移し、冷却材は抜けるのに注入できない

状態が長時間続けば炉心は露出しメルトダウンを引き起こすだろう。40気

圧まで下げるのに加圧器逃がし弁を使っても、蓄圧注入系統にも限りがあ

り、タンクが空になれば効果を失う。もともとECCSへの電源が30分程

度で回復することになっているため、長時間の停電を想定していない。も

ちろんバックアップ電源があると主張するだろうが、福島第一原発事故で

は電源設備系統は地震により破壊されているから、長期間にわたり電源が

使えない状態を想定しなければ、またしても想定外になるだけである。

 

 

5.注入圧力はわずか7気圧

 

 さらにバックアップとして想定されているのは消防車だが、ポンプの注

入圧力は7気圧程度しかない。その圧力で消防用水配管に水を送ったとこ

ろで、炉心に入る保障もない。

 

 規制庁に対して「消防用水ポンプを使って冷却材を遅れることを実証し

たのか」と問うと、「稼働中の原子炉にそんなことは不可能である」と、実

証しないことをあたかも当然と、開き直った。これはおかしい。

 実証されていない装置を「安全設備」などと銘打って設置するようなプ

ラントはあり得ないことだ。最後に水が入らないとメルトダウンを避けら

れないといった段階で、実証性のない装置を使って水が入るなど、想定す

ること自体間違いだ。

 

 規制庁は「消防用水配管の部分、部分で注入できるところをテストして

いる」というが、そんな常圧で動かす場所をいくらチェックしても意味は

ない。

本当に厳しい場所、つまり一次冷却材の内蔵する150気圧になる場所に注水

できることを実証しなければ、AM設備などといえるわけがない。

 

 例えば同じAM設備である「ホウ素注入系」については定期検査ごとに

実際に注入できることを試験しているし、ECCSの設備についても注入

できることを実証試験で確認している。では、消防用水配管の実証性を試

験しないのはなぜか。実証できないからに他ならない。

 

 福島第一原発事故でも明らかに使い物にならない設備であることが「実

証」されてしまった設備を、AM設備であるとする規制委員会の規制基準

適合性審査は、茶番劇である。