山崎久隆

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┗■1.あまりに酷い伊方3号機

 |  再稼働直前に故障する原発-川内(九州電力)も高浜(関西電力)

 |  伊方(四国電力)も…

 |  規制庁の甘い審査-規制庁交渉で痛感したひどい回答、

 |  特に原子炉の安全性

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)あまりに酷い伊方3号機

 

 四国電力伊方原発3号機が12日に原子炉を起動した。プルトニウム燃料

(MOX燃料)を積んだプルサーマル炉でもある。

 8月9日長崎原爆の日に再稼働阻止全国ネットワークが規制委と交渉を

持ったが、その結果、一般とも科学ともかけ離れた認識に唖然とさせられ

た。これまでも何度も議論をしたが、今回は最も強くそれを感じることに

なった。担当した箇所での質問と回答に対し、特に原子炉の安全性に関す

る点についての批判を以下に述べる。

 

見出し

1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい

2.1000ガルに耐えられる?

3.マジックナンバー1.54倍

4.自然循環不成立時の過酷事故対策

5.注入圧力はわずか7気圧

 

 

1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい

 

 原子炉一次系に破損が発生すると流出する冷却材の流れに阻害されて自

然循環は成立せず燃料を冷却できないことは明確である。炉内の冷却材は

開口部に向かって流れてしまうからだ。

 自然循環は炉心燃料の熱により発生し、高温になった冷却材は出口配管

を通過して蒸気発生器に向かい、そこで二次系または空気(二次系が蒸発

していれば)により冷却されて比重の大きな冷却材になるので、蒸気発生

器細管を下り一次冷却材ポンプを経て入口ノズルから原子炉内に戻る。こ

れが自然循環の流れだが、何らかの原因により蒸気発生器細管、加圧器、

一次冷却材ポンプなどの何処か(計装系などの微少配管なども含めて)

漏えいが発生したら漏えい口から冷却材は噴出し、冷却材の流れは損傷部

に向かう一方的なものになる。

そのため自然循環は成立しない。

 

 その中でも漏えい箇所になる可能性の高い一次冷却材ポンプは、実は破

損が全くなくても電源が喪失しただけで漏えいが発生するやっかいな装置

である。

 ポンプには「シール部」という場所がある。ポンプ回転軸を伝って内容

物が漏れるのを防ぎ、軸受を安定させる装置だ。加圧水型軽水炉の一次系

にはループごとにポンプがあるので、伊方3号機の場合は3台ある。

 そのシール部は外から強い圧力をかけて「軸封水」または「シール水」

を押し込んでおり、そのおかげで隙間から冷却材が漏れるのを防いでいる。

この水圧は炉圧より高く157気圧以上で「充てんポンプ」というポンプに

より圧力がかけられている。しかし電動ポンプだから電源喪失と共に機能

喪失する。

 

 機能を喪失するとシール水を押し込めなくなり、内部の157気圧の冷却

材が漏れてくる。最大漏洩量は最も圧力が高い漏えい初期段階でポンプ

1台あたり毎時最大109トンと想定されている。(時間と共に圧力が下が

るので漏洩量は徐々に減少する。)

 シールの破損は、この漏洩量を増やす方向に影響すると思われるので、

真剣に検証をすべきなのだが、今回の漏えいが「シール水のみの漏えい」

だとして、何の検証も検討もしていない。安全側に立った態度とは到底い

えないのである。

規制庁は自らは事故原因調査もしていない。

 

 四国電力によると、格納容器耐圧検査において使用圧力の1.1倍をかけ

たところ、ポンプ軸封部のOリングに外部から圧力が掛かり変形、そのま

ま動かしたため軸受が傾き漏えいに至ったというのだが、これだとポンプ

3台とも起きない理由の説明にならない。個体差だと四国電力は言ったそ

うだが、それで済むのならば規制庁などいらない。原因と調査がいいかげ

んだと、全く予期しない原因があっても排除されていないので、運転中に

大規模な破たんを来しても未然に防げない。そのような事例は過去にいく

らでもあったではないか。

 

 典型的例を一つあげれば、軸振動の増大を甘く見て再循環ポンプを破壊

するまで運転し続けた福島第二原発3号機の事故がある。その前年に同型

機の1号機で起きていた損傷を見逃したことが、最終的に事故を未然に防

げなかった。

 こんな経験を山のようにしているのに、今回の規制委の稼働許可は、何

が起きても教訓にさえならない現実を見せつけている。

 電源喪失時には一次冷却材ポンプが冷却材喪失の大きな流出点になると

分かったのは福島第一原発事故の教訓である。それまでは抽象的には認識

されていたが、そもそも全電源喪失が長時間続くという想定そのものが

「想定外」なので、実態として対策されていない。

 

 では、福島第一原発事故後の今はどうなったのかというと、本質的には

何ら変わりはしない。

 ポンプはもちろん以前のままだし、冷却材喪失対策が、結局は消防車の

ポンプという。せめて炉圧と同じ圧力でも注水できる電源不要のシステム

を付けるべきであるが、対策は取られないままに加圧水型軽水炉が動き出

している。

 一つの方法は、沸騰水型軽水炉の原子炉隔離時冷却系統と同様の装置を

付けることだ。

 

 

2.1000ガルに耐えられる?

 

 愛媛県は、伊方3号機が中央構造線及び中央構造線断層帯のほぼ真上に

あることから、650ガルの基準地震動に大きな不安を感じたのであろう、

1000ガルの地震にも耐えられるのかと四国電力に問うた。そこで四国電力

は実力はもっとあるとして1000ガルを想定した「伊方発電所3号機耐震裕

度確保に係る取組みについて」と題する報告書を2015年7月付で県に提出

した。

 この、いわゆる「実力評価書」について8月9日に規制庁に問うた。

工事計画認可申請の計算とかけ離れた文書に、いったいどんな意味がある

のかと。

 

 1000ガルとは単純計算ならば、基準地震動の1.54倍の揺れになり、ただ

でさえ厳しい蒸気発生器細管や各種管台などが、そのままでは破損するの

ではないかと疑問を持つのは当然だ。

 ところが四国電力は、工事計画認可申請書にはない「実力評価」を持ち

込み、大きな揺れの力にも耐えきれるとする。実力評価とは「適用実績の

ある詳細評価」と記載しているが、実態は安全余裕をはぎ取り、実際に

取り付けている材料や、材料の強度評価や設置状況を組み込んで加算し、

耐震裕度を上方修正したものである。

 

 一見合理的に見えるが、材料欠陥や老朽化、あるいは設計、施工ミスな

どは一切考慮できないので、実力といいながら実態は計算上のカタログス

ペックでしかない。

 工事計画認可申請において厳しい計算条件を付けるのは、設置後に何十

年、場合によっては60年間も使う装置や配管類が、稼働中に老朽化しひ

び割れや減肉が起きたり、工事や施工に問題があって傷が付いていたり、

ありとあらゆ

る「不測の事態」を想定するからである。

 航空機の場合、空力強度計算だけで製造しても耐空証明と型式証明

(これがなければ乗客を乗せられない)を取れないのは、試験飛行などで

分かる欠陥が潜んでいる危険性を経験的に知っているからだ。

 

 

3.マジックナンバー1.54倍

 

 「1000÷650」これが1.54である。

 設置許可変更申請書において伊方3号機は650ガルを想定した。新基準適

合審査にあたり、基準地震動を570ガルから650ガルに引き上げたのだ。

 それでも不安だとした愛媛県が更なる対策を求めた。つまり1000ガル程

度にも耐えられるのかと問うた。これに四国電力は「耐えられる実力があ

る」と主張した。

 

 その根拠として四国電力は、650分の10001.54だから、1.54倍以上の

「裕度」があれば良いことにした。しかし工事計画認可申請書に書かれた

耐震裕度の中には、そのままでは1.54倍に達しない装置や機器類がいくつ

もあった。これでは1000ガルには耐えられないとの結論になる。

 そこで「実力評価」の出番である。計算根拠をいろいろ都合よく変える

ことで耐震裕度すなわち倍率に下駄を履かせたのである。

 工事計画認可申請の場合は、例えば材料の肉厚は「必要最小肉厚」で計

算する。設計製造時の材料の厚さが、運転中の腐食や浸食で失われ、ある

いはひび割れていても設計上許容される最小値になっているとして計算す

る。

 

 もちろん、そこまで減肉やひび割れが起きていることは、特に放射性物

質を内蔵する一次系では希かもしれない。しかし希でもあり得ることだか

ら、安全側に値を取り、それでも放射性物質を封じ込めることが出来るこ

とを条件としている。これが「工認の手法」である。

 

 しかしこれでは厳しい結果になるので、「実力評価」では、肉厚は公称値

つまり材料として納品されるカタログスペックの値を使う。もちろん使用

中の減肉やひび割れなど想定しない。

 当然ながら裕度は高い値になる。例えば蒸気発生器伝熱管の場合、650

ガルにおける「工認の手法」では基準地震動による発生応力値÷評価基準

(塑性変形[そせいへんけい]は起こすが破壊には至らない一定の値)

1.09倍(1.54倍以下)が、「実力の手法」では同じ計算で1.61(1.54倍以

)になるのである。

 

 当然、1000ガルを想定しても「実力の手法」ならば余裕があることにな

る。例えば蒸気発生器伝熱管の例では1.61÷1.091.48倍ほど耐震裕度

が増えるというわけだ。

 しかし「工認の方法」で計算すると0.7(1.09÷1.540.71)程度でしか

ない。これは破壊を意味する。

 

 すなわち蒸気発生器伝熱管は1000ガルの揺れには持たないのである。

 同様に持たなくなる装置類を四国電力の「伊方発電所3号機耐震裕度確

保に係る取組みについて」から読み取ると次の通り。

 抽出条件は、主要機器の中で「工認の方法」で計算し耐震裕度が1.54

を下回るものである。

 

 1.原子炉容器の管台(どこだか不明)、2.炉内構造物(ラジアルサ

ポート)、3.燃料集合体(制御棒案内シンブル)、4.原子炉容器支持構

造物埋込金物(スタッド)、5.蒸気発生器(管台)、6.蒸気発生器内部

構造物(伝熱管)、7.蒸気発生器支持構造物(支持脚)、8.蒸気発生

器支持構造物埋込金物(支持脚埋込金物コンクリート)、9.一次冷却材

ポンプ(軸受)、一次冷却材ポンプ支持構造物埋込金物(上部支持構造物

埋込金物基礎ボルト)、10.制御棒クラスタ(被覆管)、11.制御棒クラ

スタ駆動装置(タイロッド)、12.燃料取替用水タンクポンプ・原動機

(軸位置)、13.使用済燃料ラック(溶接部)、14.原子炉格納容器本体

(胴部)、15.アニュラスシール(根太)、16.格納容器排気筒(本体)、

17.タービン動補助給水ポンプ・駆動用タービン(弁箱)、18.その他配

管・サポート(具体的部位不明)、19.一般弁(具体的部位不明)、

20.主蒸気隔離弁操作用電磁弁(据付位置)、21.主蒸気安全弁(据付位

置)、22.制御棒(挿入性)、23.静的触媒式水素再結合装置(本体)

 

 これらが全て1.54を下回っているので1000ガルの揺れには耐えられな

いことになる。そのため実力評価などと下駄を履かせる手法を導入したが、

それで強度が上がるはずもない。

 規制庁の加圧水型軽水炉担当官は、この実力評価については法律で定め

られたものではないし、国に対して審査を求めたものでもないので、関知

していないとした。事業者がことあるごとに主張する「国のお墨付き」は、

「実力評価」については一切無いのである。

 

 

4.自然循環不成立時の過酷事故対策

 

 過酷事故対策(アクシデントマネジメント略してAM)の一つが「フィ

ードアンドブリード」つまり「減圧して注水」である。一次系の熱を逃が

す方法は二次系への熱の伝達だが、電源喪失状態ではポンプは動かないか

ら、炉心燃料で暖められた高温の冷却材が蒸気発生器の伝熱管に流れ込

み、そこで二次系の水または空気に熱を逃がし、炉心に戻ることで炉心

を冷やす。しかし伝熱管に気体が溜まれば自然循環は止まる。燃料が損

傷したりメルトダウンしたら大量の希ガスと水素が発生するから、気体

により自然循環は止まるのは誰にも分かる。

 

 その際に「フィードアンドブリード」を行うのだが、加圧器逃がし弁を

開けば自動的に冷却材喪失になってしまう。

 また、蒸気発生器の伝熱管に気体が溜まるほど炉心損傷が進んでいれば、

高温のガスがポンプシールや弁を破損させている可能性が高い。冷却材の

喪失はそういうところでも進行している可能性がある。

 

 問題は「水を入れる方法」である。

 ECCSは蓄圧注入系以外は電動ポンプを使うため、電源喪失状態では

入らない。蓄圧注入系も40気圧程度に下がらなければ入らない。高圧で漏

えいが続くような状態では、冷却材を喪失し続けていても補充は出来ない。

 

 原子炉が高い圧力のままで推移し、冷却材は抜けるのに注入できない

状態が長時間続けば炉心は露出しメルトダウンを引き起こすだろう。40

圧まで下げるのに加圧器逃がし弁を使っても、蓄圧注入系統にも限りがあ

り、タンクが空になれば効果を失う。もともとECCSへの電源が30分程

度で回復することになっているため、長時間の停電を想定していない。も

ちろんバックアップ電源があると主張するだろうが、福島第一原発事故で

は電源設備系統は地震により破壊されているから、長期間にわたり電源が

使えない状態を想定しなければ、またしても想定外になるだけである。

 

 

5.注入圧力はわずか7気圧

 

 さらにバックアップとして想定されているのは消防車だが、ポンプの注

入圧力は7気圧程度しかない。その圧力で消防用水配管に水を送ったとこ

ろで、炉心に入る保障もない。

 

 規制庁に対して「消防用水ポンプを使って冷却材を遅れることを実証し

たのか」と問うと、「稼働中の原子炉にそんなことは不可能である」と、実

証しないことをあたかも当然と、開き直った。これはおかしい。

 実証されていない装置を「安全設備」などと銘打って設置するようなプ

ラントはあり得ないことだ。最後に水が入らないとメルトダウンを避けら

れないといった段階で、実証性のない装置を使って水が入るなど、想定す

ること自体間違いだ。

 

 規制庁は「消防用水配管の部分、部分で注入できるところをテストして

いる」というが、そんな常圧で動かす場所をいくらチェックしても意味は

ない。

本当に厳しい場所、つまり一次冷却材の内蔵する150気圧になる場所に注水

できることを実証しなければ、AM設備などといえるわけがない。

 

 例えば同じAM設備である「ホウ素注入系」については定期検査ごとに

実際に注入できることを試験しているし、ECCSの設備についても注入

できることを実証試験で確認している。では、消防用水配管の実証性を試

験しないのはなぜか。実証できないからに他ならない。

 

 福島第一原発事故でも明らかに使い物にならない設備であることが「実

証」されてしまった設備を、AM設備であるとする規制委員会の規制基準

適合性審査は、茶番劇である。