山崎久隆

20180810 

東海第二原発(茨城県東海村)の本質的問題   (その6

 |   福島第一原発事故の原因究明は出来ていない 

 |    同じ沸騰水型軽水炉である東海第二で教訓の反映は出来ていない 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表) 

8.福島第一原発事故の原因究明は出来ていない 

  同じ沸騰水型軽水炉である東海第二で教訓の反映は出来ていない 

◎ メルトダウンを起こした福島第一原発3機の原子炉は、どんな推移でメルト 

ダウンに至ったか。これについては明確に捉えられていない。 

 特に水位と圧力と温度のデータが正確に把握できなくなってから数時間でメル 

トダウンをした1号機については環境放射線の増加との関係が分かっていない。 

炉心が空炊きになった時刻すら未確定だ。 

 これでは他の原発の安全対策を取ることはできない。 

 原子炉への給水が止まってから、炉心が露出するまでの間、注水が出来なけれ

ばどうなるかの理解が運転員にあったとは思えないのである。 

 冷却材が入らないままで作動したのはIC(非常用復水器)のみである。この装 

置は炉心から出る蒸気を、細管を通じて二次系の冷却水に移し、二次系冷却水は 

蒸気となって外部に放出される構造だ。炉内の冷却水は全く増えない。 

◎ 一方、全電源喪失状態では、原子炉から冷却材が漏れていくことは常識であ 

る。特に大きな量が抜ける要因は原子炉圧力を下げるために逃がし弁の作動だが、 

1号機では作動していない。従って、逃がし弁以外の、給水系ポンプ軸受部と再 

循環ポンプの軸受部からの漏えいが大きな喪失源になるだろう。 

 このような漏えいはいわば小口径破断にあたり、原子炉内の圧力は下がらないので、

シビアアクシデント対策として備えていた消防用水配管からの注水は出来ない。 

 これは2、3号機でも起きたことだが、減圧しなければ10気圧程度の注入能力 

しかない消防用水ポンプから水は入らない。 

◎ 冷却材を喪失してから炉心破壊が起きるまでについても、海水注入と燃料の 

冷却能力の変化の関係やMOX燃料体の存在と炉心溶融の速度や発生点の解明、 

燃料が熔けてから圧力容器のどこを破って下部に到達したかの経路の解明、炉心 

スプレイ系を使っての冷却水の注入の効果と別の方法で行った場合との比較評価、 

落下したデブリの挙動、特に2号機で何故全体の75%もの放射性物質を放出させ 

るに至ったか、格納容器の破損の状況とメカニズム、そしてベント装置の効果と 

動作確認などは、緊急対策から新規制基準に取り入れられた重大事故対処設備の 

有効性や成立性について重要な情報を有することばかりだ。 

◎ 解明をしないままに次々に再稼働をさせ、それに成立性も信頼性もあやしい 

ベント装置など新たな過酷事故対策装置を取り付けて、次の事故がこのような後 

付けの装置の不備や欠陥で起きたらどう責任を取るつもりか。 

 先行する事故を徹底して解明し、再発防止対策を講じてから、新たな段階に進 

むべきなのである。  (その7)に続く 

20180806 

.東海第二原発(茨城県東海村)の本質的問題   (その6

 |   応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking,SCC)など老朽化で破損 

 |    炉内構造物も配管も応力腐食割れで壊れてゆく 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表) 

 

7.応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking,SCC)など老朽化で破損 

  炉内構造物も配管も応力腐食割れで壊れてゆく 

 

◎ 東海第二原発の炉内構造物の内、原子炉圧力容器の真ん中付近にあるシュラ 

ウド()には多くのひび割れが発生している。 

 このひび割れは今回の規制基準適合性審査においても考慮したはずだが、問題 

がないとされた。「維持基準内」のひび割れとの評価だ。 

◎ しかし亀裂のある構造物をそのままにすることは問題が多い。 

 例えば大きな地震を想定すれば、亀裂が進展して破断する可能性は亀裂が無い 

場合に比べて大きくなる。その評価は基準地震動で行われているが、もっと大き 

な揺れも想定しなければならないし、さらに20年間にわたり亀裂が進展すること 

も考えなければならない。 

 あまりにも不確実性が高いのだが、それでも亀裂を残したまま再稼働しようと

している。 

◎ 応力腐食割れとは、材料と環境と応力の組み合わせで発生する。 

 材料とは金属材料中の不純物の量が影響する。具体的には炭素である。炭素含 

有量の大きい材料は応力腐食割れに弱いが、これを対策していたとしても、溶接 

に使用した材料も問題がある。インコネル600という材料は応力腐食割れに弱いと 

されるが東海第二原発で使用している。 

◎ 環境とは水に含まれる酸素や水素、混じり込む塩素などが影響することを意 

味し、BWRの場合は応力腐食割れ対策として水素を添加している場合がある。 

 また塩素は海水の漏れ込みによっても侵入するが、海水冷却を行う日本の原発 

は極めて不利な状況にある。 

◎ これに加え応力つまり引っ張りの力が掛かることでひび割れが進展する。引 

張応力の代表格は製造時の溶接による残留応力だが、東海第二原発のように古い 

原発の場合は、中性子照射による照射脆化、あるいはECCS緊急炉心冷却装置 

の作動に伴う熱応力なども考えなければならない。 

 これらの要素を全て見た上で、シュラウドのひび割れが過酷事故につながらな 

いとの証拠を明らかにする義務が事業者にも規制委にもあるはずだが、材料や寸 

法や構造設計などの基本情報を白抜きにして隠している限り証明など出来ない。 

 再度、資料を明確に示しながら問題がないことを明らかにすべきだ。

 

()シュラウド:原子炉圧力容器内で燃料集合体と制御棒などを支えている 

        円筒状のステンレス製構造物 

20180804 

東海第二原発(茨城県東海村)の本質的問題   (その5

 |   再循環ポンプという大きな弱点 

 |    圧力容器の下部に巨大配管のリスク 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

 

6.再循環ポンプという大きな弱点 

  圧力容器の下部に巨大配管のリスク

◎ 従来型のBWRは圧力容器の下に再循環系出口配管が2箇所取り付けられて 

いる。これは再循環系に炉心の冷却材を送るためだが、燃料領域の下に内径55

ンチの配管の存在は、冷却材喪失事故に対して脆弱である。

 旧安全審査において、最も重大な事故の一つは再循環系出口配管のギロチン破

断であった。現在でも過酷事故の一つであることは間違いない。 

◎ 再循環ポンプの事故は福島第二原発3号機で1989年1月に発生した。BWR 

タイプ5の再循環ポンプはそれまでのポンプの規模を拡大して作られていたため、 

ポンプの回転により水切り部から発生する水圧の変化を伴う振動周波数が低周波 

側に動いていた。 

 これとポンプの内部に取り付けられていた水中軸受のリングが運転領域の90% 

を超えたあたりで共振し、溶接部分に応力が集中して亀裂が発生、溶接が「完全 

溶け込み」ではなく「隅肉溶接」と呼ばれる脆弱な方式であったため、亀裂が進 

展して破断した。 

 運転中にリングが脱落し回転翼と噛み込みを起こし、大量の金属片が原子炉に 

流れ込み一部は燃料に突き刺さった。

 東電の推定で約30キロのステンレス片が燃料の間や制御棒駆動機構に入り込ん 

だため764体の燃料と185体の制御棒は全部交換、炉内も長期間をかけて洗浄し、 

ポンプの軸受部の構造を改良型に付け替え運転を再開した。 

 これらは設計ミス、施工ミス、運転管理ミス、そのうえ事故発生直後の情報公 

開を怠るミスも加えて、あらゆるミスを繰り返した。 

 再循環ポンプは炉内から冷却材を引き抜くところから入れるところまで、全て 

に大きなリスクを持っていることを忘れていたかの行為に、多くの人々が強い憤

りを持った。 

 圧力容器から出ている大口径配管の危険性は容易に想像が付くが、ポンプその 

ものと出口配管であるリングヘッダー配管については、大口径破断を考慮すれば 

それに包絡していると考えられている。 

◎ しかし実際はそうではない。 

 冷却材喪失事故には大口径破断、中口径破断、小口径破断とに分けられる。 

 出口配管の破断は大口径破断であるが、電源を失ったポンプそのものは小口径 

破断に相当し、リングヘッダー配管の一部(一本)破損は中口径破断に相当する。 

 福島第一原発事故では全電源喪失時にポンプが止まり、軸受部に流れていたパー 

ジ水も止まった。 

 軸受にながされるパージ水とはポンプ内部に係る圧力(約70気圧)により炉内 

の冷却材が軸受部を伝って外部に漏れ出ることを防ぐために、ポンプで加圧した

純水を軸受部に押し込む水を言う。

 電源喪失によってパージ水を送るポンプも止まるが、再循環系配管部は閉鎖で 

きないので炉内圧力はそのままかかり続ける。圧力差で冷却材がポンプの軸受を 

伝って漏えいするので、事実上の小口径破断事故と同様の事態となる。同じこと 

は給水系配管に取り付けられている給水ポンプでも生ずる。 

◎ このような場所からの漏えいを想定して水位低下時にはECCSを作動させ 

ることとなるが、電源喪失ではこれも出来ない。 

 原子炉圧力を下げるための逃がし弁からの漏えいだけでなく、こういったとこ 

ろからの冷却材喪失は想定されていない。(「その6」に続く

 20180730

  東海第二原発(茨城県東海村)の本質的問題   (その3

 |   沸騰水型軽水炉の欠陥  炉心安定性の欠如と核暴走の危険性 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表) 

※《事故情報編集部》より

 

 7月21()に開催された『先月・今月・来月の原発問題』で山崎久隆さんよ 

り提起された「東海第二原発の本質的問題」(60項目)について、抜粋しながら順 

次連載したいと思います。 

4.沸騰水型軽水炉の欠陥 炉心安定性の欠如と核暴走の危険性 

◎ 軽水炉は原子炉内部の核分裂反応と炉心燃料の冷却共に「水」を使う。その 

中でも沸騰水型軽水炉は冷却材と減速材である水が常に沸騰しているので、密度

が大きく変化する。 

 アワが多い炉心上部は減速材密度が小さく、アワが少ない炉心下部は減速材密 

度が大きい。 

 核分裂反応は原子炉下部が盛んになる。これを平均化するために中性子を吸収 

する「ガドリニウム」を下部により多く添加したり制御棒操作により燃焼を平均 

化する作業を行う。 

◎ 沸騰水型軽水炉のうちBWRタイプ5と呼ばれる東海第二、柏崎刈羽原発1 

~5号機などは、大型の再循環ポンプを2台使い、配管で圧力容器から水を抜い 

てポンプで加圧して戻している。 

 この際ラッパのような形をした「ジェットポンプ」と呼ばれる装置を使い周辺 

の水を巻き込んでさらに流量を増やして炉心下部に噴出させ炉内での水の循環を 

行っている。 

 再循環ポンプにより原子炉内の水の流れを作ることで、アワを効率よく上部に 

押し流すことで燃料の周囲に存在するアワの密度を整えている。 

 この強制循環を炉心流量というが、再循環ポンプが全部止まると原子炉出力は 

効率的な中性子の減速が出来なくなるため、40%程度にまで急降下する。 

 また、炉内の水が減ると水位が低下し、相対的に冷却能力も低下するためアワ 

の密度が増えて出力が急降下する。 

◎ これらは「ボイド(アワ)反応度係数が負」という性質を説明したもので、 

原子力の専門家からは「固有の安全性」などとも言われている。 

 しかし裏返せば急激なアワの減少や冷たい水の投入はアワを消す方向に働くの 

で、ボイド反応度係数が負であるために炉心出力が急激に増加する要因でもある。 

 特に運転中に再循環ポンプが止まったり動いたりを繰り返せば、それだけで炉 

内出力は極めて不安定になるし、冷水投入は原子炉冷却材喪失事故でECCS 

(緊急炉心冷却装置)炉心スプレイ系を作動させれば自動的に炉内温度より低い 

水を送り込むことになるので炉心の不安定化について容易に条件を満たすことと 

なる。

 炉心の減速材密度すなわちアワと水の比率は、再循環ポンプが停止すると不規 

則に変動し始めるが、これに伴い原子炉出力も変動する。そのことを説明した図 

が「「東海第二発電所重大事故等対策の有効性評価補足説明資料」の13ページ 

「補足62」の第1図有効性評価「原子炉停止機能喪失」における運転特性図上 

での運転点の推移」だ。

 ギザギザに乱高下しているグラフは炉心流量(横軸)と出力(縦軸)の関係を 

表している。矩形で引かれたラインは原子炉起動から通常運転時における制限範 

囲を表しており、この外に逸脱することは禁じられている。 

◎ 炉心流量は再循環ポンプで、出力は制御棒でコントロールされており、再循 

環ポンプが停止した場合、その状態に応じて制御棒を挿入し、出力を大きく下げ 

ている。これを「選択(または代替)制御棒挿入操作」または「ハーフスクラム」 

という。 

 しかし今回の重大事故等対策では制御棒は全挿入失敗、再循環ポンプは全台停 

止を前提とするので運転制御はできない。 

◎ いかなる方法で炉を止めるのか、それには中性子を吸収するホウ素(ボロン) 

を投入する。ほう酸注入系統がそのために設置されている。このような設備を 

「後備停止系」という。 

 では、この系統が機能しない事態を招いたらどうするのか。例えば地震である。 

制御棒駆動機構185本が全部破損し、制御棒が入らない事態になるということは、 

ほう酸注入系統の配管かノズルが破損して入らなくなっている事態も考えられる。 

重大事故等対策とはそういった「あり得ない」ほどのことも想定しなければなら

ない。 

◎ 唯一残された手段は、中性子減速材である水を減らすことである。給水シス 

テムをコントロールし、原子炉内の水位をギリギリまで下げていく。その「ギリ 

ギリ点」はレベル1近傍。有効炉心頂部からわずか40センチ上のレベル1の、 

50から150センチ上を目指すという。 

最早綱渡り運転である。 

 念のために言えば、この段階で原子炉は完全に停止してはいない。10%か20% 

か、出力は残っている。崩壊熱だけの冷却にすら失敗しメルトダウンを来した福 

島第一原発事故の教訓は感じられない。 

◎ この炉心安定性の欠如にはもう一つ大きな問題がある。出力が不安定化し、

乱高下している状態でも冷却は続ける必要がある。 

  方法は二つ。水を入れるか熱を抜くかだ。水を入れるのはECCSなどの注入 

系ポンプの駆動。 

  しかしこれは水が入るため炉心の不安定さをますます酷くする。 

  もう一つは圧力逃がし弁からサプレッション・プールに熱を捨てる方法。一定 

の時間は使えるが冷却能力を超えてプール水の温度が高くなると止まる。

 不安定な状態が続くと出力は激しく上昇し、最悪の場合は暴走状態となり爆発 

的に反応する。チェルノブイリ原発事故のように。 

◎ 福島第一原発事故はいわばTMI型であったが、次に東海第二で起きるとき 

はチェルノブイリ原発事故のような性質かも知れない。

  その場合、福島第一原発事故のような放射能拡散予測とそれに対する避難態勢 

の準備は全く実態に合わない問題がある。 (「その4」に続く

20180801

東海第二原発(茨城県東海村)の本質的問題   (その4

 |   原子炉水位さえ見えなくなる原発 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

※《事故情報編集部》より

 7月21()に開催された『先月・今月・来月の原発問題』で山崎久隆さんよ 

り提起された「東海第二原発の本質的問題」(60項目)について、抜粋しながら順

次連載したいと思います。 

5.欠陥水位計が曝露された福島第一原発事故原子炉水位さえ見えなくなる原発

 沸騰水型軽水炉の炉心水位計は圧力容器の下部と上部から管を引き出す構造に 

なっている。上部には基準面器(凝集槽)と呼ばれるタンク構造を持っている。

 管が真下に延び、その先は圧力容器下部から引き出された管につながり間に差 

圧計を付けている。 

 原子炉内部の気水混合状態に対し、凝集槽につながる配管は水で満たされてお 

り、圧力容器内部の水面を外に出すことで計測している。 

 通常は水位測定に問題は生じないが、容器内の冷却材が減少し、基準水面が失われた後に下部の配管からも水が抜け、再度冷却材を投入した場合、液面が正しく計測できなくなる場合がある。 

 福島第一原発事故の後に起きた水位計測のミスはこうして起きた。 

 実際には圧力容器内が空炊き(有効燃料下部を下回っていた)状態でも水位は燃 

料の中央付近にあると指示していた。このため冷却はできていると考え、その後 

の対応に失敗しメルトダウンを引き起こした。 

 この水位計の欠陥はおよそ沸騰水型軽水炉であればBWRの全てのタイプにおいて起こりえる。 

 東海第二原発は水位計を増設し、従来は一つしかなかったものを3箇所に取り 

付け、仮に誤差が生じた場合は多数決で決定するとした。一見対策になっている 

ようで実際には無効である。

 

 福島第一原発事故のようなケースでは3つの水位計総てが同じエラーを出すだ 

ろう。仮にバラバラに出ていたとして、多数決で正しい水位を取ることなど出来ない。 

 対策を取るのであれば、計測原理の異なる水位計を複数取り付けることだ。例 

えば中性子の減速能を考慮し、炉心から出る中性子線を圧力容器外部で測定し、

 減速能の変化から水位を読み取ることが出来る。

  また、炉心下部に取り付けられている中性子計測計配管のノズルなどを利用し、

 差圧計を多数取り付ければ、単純な重力計測だけでその上部にある水の体積をつ

かむことは難しくないであろう。

 これら原理の異なる複数の測定装置を組み合わせて、炉心の冷却材が大幅に減

少しても計測できる体制を取ることくらいは出来るはずである。

  (「その5」に続く)

20180728 

┗■2.東海第二原発(茨城県東海村)の本質的問題   (その2

 |   当初設置許可を出した時とまるで変わってしまった 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表) 

 

※《事故情報編集部》より 

 7月21()に開催された『先月・今月・来月の原発問題』で山崎久隆 

さんより提起された「東海第二原発の本質的問題」(60項目)について、抜 

粋しながら順次連載したいと思います。 

 

2.設置許可時との状況の変化 

  当初設置許可を出した時とまるで変わってしまった 

◎ 東海第二原発が建てられた時期は1970年代の高度経済成長下で電力生 

産のために数多く発電所が建設されていた。 

 当時も東海第二原発の30キロ圏内人口は十分大きかったと考えらるが、 

原子力非常事態に際しての事故想定は敷地内に留まるとされていた。 

◎ 1960年代に過酷な汚染に見舞われ、1970年代以降は公害問題が社会問 

題化し、立法措置が取られてきた。1967年に公害対策基本法、1968年に大 

気汚染防止法、1971年に環境庁が作られ、1993年には環境基本法が制定さ 

れた。 

 これら公害の定義は「人の活動に伴って生じる相当の範囲にわたる大気 

汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭によって、 

人の健康または生活環境に係る被害が生ずること」とされ、放射性物質は 

含まれなかった。 

 しかしながら公害防止費用や賠償について「汚染者負担の原則」が取り 

入れられ、「無過失責任主義」として故意や過失が無くても責任を負うこ 

ととされた。 

 また、濃度規制ではなく汚染物質の総量規制も取り入れられて環境への 

影響を低減させる努力が定められた。 

◎ 原子力発電所についても同様に規制されるべきであったが、これらの 

考え方が十分には取り入れられていない。 

 放射性物質は依然として濃度規制であり、東電福島第一原発事故の後に 

賠償責任を負うべき東京電力に対しては税金を投入したり他電力の支出金 

を充てるなど、原則を逸脱する賠償方法を、法律を作ってまで実施した。 

 さらに福島第一原発事故の際には存在すらしなかった新電力に対してま 

で託送電力料金として費用負担を強いている。 

 東海第二原発の設置許可当時と現代では、大きく環境が異なっており、 

こうした点を考慮してもなお、再稼働を目指すべきであるかを考える必要

がある。  (「その3」に続く)

 20180727

東海第二原発(茨城県東海村)の本質的問題   (その1

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表) 

※《事故情報編集部》より 

7月21()に開催された『先月・今月・来月の原発問題』で山崎久隆さんより提起された「東海第二原発の本質的問題」(60項目)について、抜粋しながら順次連載したいと思います。 

1.設置許可の瑕疵(かし)-設置許可をしてはならない原発・東海第二 

◎ 2011年3月11日、東日本大震災で福島原発震災が発生し、原子力施設の地震・津波対策、過酷事故対策には実効性がないことを実証した。従来の原子力規制は、原子力安全委員会が原子炉等規制法に則り一次審査を実施、原子力安全・保安院が二次審査を行いダブルチェックで実効性を確認するとされていた。しかし、震災と津波の前には無力だった。 

 震災後、国が最初にすべきだったのは全原発を止めて安全体制の確認を実施すると共に、設置許可を一旦取り消すことだった。とりわけ老朽化した原発は直ちに廃炉にする必要があった。当時、政府は原発が順次、定期点検で停止していく中で運転再開を認める場合はストレステストを行い、緊急津波/地震対策の有効性を確認するとした。しかし鳴り物入りの「ストレステスト」すら尻切れとんぼに終わった。原子炉等規制法が改正され、2014年からは再稼働の際は改正法の下で地震と津波対策及び重大事故対策の有効性を確認することとされた。設計段階で想定していない規模の地震や津波に後付けで十分な対策が可能なのか大いに疑問だった。そこで当時の政府は厳格な審議を行うとした。

 ◎ 日本原子力発電東海第二原発は、最大の人口密集地帯、東京圏から最も近い原発だ。 

 原子力委員会が1964年に定めた立地指針には次のように記載されている。「敷地周辺の事象、原子炉の特性、安全防護施設等を考慮し、技術的見地からみて、最悪の場合には起るかもしれないと考えられる重大な事故(「重大事故」という。)の発生を仮定しても、周辺の公衆に放射線障害を与えないこと。」 

「更に、重大事故を超えるよう技術的見地からは起るとは考えられない事故「仮想事故」という。)の発生を仮想しても、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと。」(原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて) 

 30km圏内人口は約96万人、50Km圏内で約144万人、最小エリアの5km圏内(PAZ)で約5万人だ。これでは立地指針に反している。この原発の設置許可は無効であると考える。

  これについて規制庁は、立地指針で想定した事故(想定事故並びに仮想事故)は現時点では過小評価であると言い出した。福島第一原発事故のような事故発生地点から周囲30kmを遙かに超える距離まで避難する事態は、想定外だ。大規模な住民避難が出来るように自治体に原子力防災計画の制定を求めることもしてこなかった。 

◎ 規制庁が「立地指針は非現実的で現在は適用していない」というのならば、その前提で建設された原発も「非現実的存在」(つまり廃炉)としなければおかしい。一方は現実に存在し続け、いざとなれば避難せよとはあまりに勝手な言い分だ。 少なくても政府が認めた原子力緊急事態を想定する範囲30km圏は、事故が起きれば住民避難が必要となる可能性が高い。これら地域の人々全員に再稼働の是非を問うことなく議論を進めることも許されない。「重大事故が起きても影響は敷地内部に留まる」とした立地指針の違反である。 

 規制委員会は立地指針を無効なものと捉えているが、勝手な言い分である。立地指針を信用して原子力を受け入れ、或いは立地点からの距離が離れているから対策をしてこなかった自治体には同意を求めなければならない。 

  (「その2」に続く

20180708

■1.日本原電東海第二原発の20年運転延長・再稼働反対 

 |  原子力規制委員会へパブリックコメントを出そう! 

 |  参考として山崎久隆さん提出予定の意見を紹介致します 

 └──── (たんぽぽ舎メールマガジン編集部) 

パブリックコメントで提出予定の意見の一覧 

東海第二の本質的問題(1ページ 1 はじめに) 

1 設置許可の瑕疵

  そもそも設置許可をしてはならない原発 

2 設置許可時との状況の変化 

  当初設置許可を出した時と、まるで変わってしまった 

3 原発のエネルギー構成上の問題と事故の多発 

 原発はもはや電源として機能はしない 

4 沸騰水型軽水炉の欠陥 

  炉心安定性の欠如と核暴走の危険性 

5 欠陥水位計が曝露された福島事故 

  原子炉水位さえ見えなくなる原発 

6 再循環ポンプという大きな弱点 

  圧力容器の下部に巨大配管のリスク 

7 応力腐食割れなど老朽化で破損

  炉内構造物も配管もSCCで壊れてゆく 

8 福島第一原発事故の原因究明は出来ていない 

  同じ沸騰水型軽水炉である東海第二で教訓の反映は出来ていない 

9 東海第二への資金投入は福島事故対策の妨害になる 

  巨額の資金の多くは、電力からの支援金や債務保証だ 

各論ue 

地震(10p 地震による損傷の防止) 

10 想定地震のうち震源を特定しない地震が過小 

  少なくても直下M7.3以上を想定すべきである 

11 基準地震動の策定方法は過小評価 

  想定される地震から計算(入倉式等)される基準地震動が小さい 

12 地盤の不安定さが十分考慮されていない 

  日本一軟弱地盤に立つのだから、これを考慮すべきである 

13 耐震設計分類は不合理である 

  福島第一の経験は耐震設計分類の不合理を証明している

 14 残余のリスクを評価していない 

  基準地震動の範囲内で評価するのは誤りだ。限界応力値を示せ 

15 クリフエッジを示すべきである 

  地震におけるクリフエッジを明記して解析するべき 

16 地震応答解析により「十分な強度」は有しないことが判明 

  Ssを用いた解析でさえ強度は2倍を下回る箇所が多々ある 

津波(38p 津波による損傷の防止) 

17 基準津波の策定方法が不明確である 

  太平洋沖で発生する津波の選定が不明確である 

18 最新知見を取り入れていない 

  東海第二を襲う津波について新しい知見が取り入れられていない

19 防潮堤の液状化対策が終わっていない 

  防潮堤基部における液状化対策の審査がされていない 

20 津波の漂流物評価がおかしい

   漂流物の衝突解析が現実を無視している 

21 超過津波設定が過小である 

  超過津波を24m超としているが、32m級をベースにすべきだ 

22 超過津波の防潮堤耐性評価と損傷モード解析が不透明 

  超過津波で防潮堤を越えて破壊される規模が不明確 

23 超過津波の漂流物評価が非現実的だ 

  防潮堤を越えてくる漂流物の評価が現実離れしている 

24 排水機構(ゲート)の信頼性評価に無理がある 

  超過津波の排水機構の成立性に問題がある

 25 超過津波による浸水範囲と高さに問題がある 

  超過津波の溢水を想定しているのに敷地全部は冠水しないとは? 

26 最低限、各種実証試験をすべきだ 

  超過津波の影響と地震による液状化との合成解析試験を行うなど 

外部衝撃損傷(65p 外部からの衝撃による損傷の防止) 

27 竜巻評価がフジタスケールf3(100m/s)は過小である 

  日本の気象記録は近代のみなのでf5(141m/s)も考慮すべき 

28 竜巻想定で外部電源及び屋外電源設備は喪失させること 

  竜巻では屋外電源設備と非常用DG(海水ポンプ)は全損を想定すべき

29 外部火災について再処理工場等を考慮していない 

  原子力施設特に再処理工場の爆発は安全上重大な影響を与える 

30 航空機落下の火災については、故意のものと整合性を持つべき 

  航空機落下は故意によるものを含めれば確率論的議論は無意味 

火災による損傷の防止(96p 火災による損傷の防止)

31 電源ケーブルの防火対策は不十分

  全てが防火対策ケーブルではないため、対策は出来ていない

32 防火シートは対策にならない

  内部で蒸し焼きになる危険性が高く、対策にはならない

33 女川の高エネルギーアーク損傷火災のような火災は起こりえる

  高エネルギーアーク損傷火災ではケーブルが導火線になる

34 信号ケーブルが一部でも焼損したら機能喪失する

  安全保護系のケーブルが一部でも焼損すれば信号は途絶する

35 劣化の進んだケーブルも混じり込んでいる

  交換できないケーブルには被覆の損傷や硬化が起きている

重大事故等対処設備の不備

  (135p 重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係る技術的能力)

36 「地震や津波で機能喪失しないこと」は保証されていない

  超過津波やSsを超える地震に遭遇しても機能喪失しない保障が無い

37 重対設備に炉心損傷防止機能が無い

  炉心損傷に直結する出力暴走を止める方法が無い

38 重対設備の位置は海抜23mで超過津波に耐えられない

  超過津波は24mを超えてくるから23mでは浸水する

39 故意の航空機衝突やミサイルに対処できない

  故意の武力攻撃は弱点を狙って行われるも

40 格納容器ベント装置の作動は約束違反

  敷地境界で公衆被曝線量5mSvで留まる保証はない

41 スクラム失敗時の炉停止操作において成立性に疑問

  ATWS()対策のホウ酸水注入とサプチャンでの冷却は成立しない

42 ATWS時にレベル1以上の水位を維持することは困難

  原子炉水位計はATWS時に不安定化するため水位確認は困難

43 ATWSと電源喪失を競合させ解析すること

  ATWSと給水停止を競合させて炉心損傷防止機能は機能するのか

44 ATWS時にサプレッションプール水は沸騰状態

  ATWS時にサプチャンに熱を放出し沸騰状態の対策はあるか

45 ホウ酸注入系統の耐震性は不十分

  地震によりATWSが生じた場合ホウ酸注入系統が地震で崩壊する恐れ

46 ブローアウトパネルの欠陥

  地震動を模擬した6月の試験ではパネルの閉鎖に失敗している

47 ブローアウトパネル開放で放射能拡散

  水素爆発防止のためブローアウトパネル開放は放射能を拡散させる

48 使用済燃料プールへの代替注水失敗を想定しない

  燃料プールへの代替注水失敗は放射能拡散想定を遙かに超える

49 放水砲で放射能は低減する保障は何か

  放水砲の成立性について、模擬実験さえ行われていないので信頼性に欠ける

50 想定出来ていない重大事故

  大規模損壊によって発電用原子炉施設が受ける被害範囲は不確定

その他

51 敢えて審査書案で除外した「経理的基礎」はどうなった

  審査書案で除外しているのは経理的基礎が確認できないからではないか

2p 2.判断基準及び審査方針)

52 避難できない大勢の人々を放置する

  規制委は原子力防災にも責任があるので避難計画の当否を見るべきだ

135p 重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係る技術的能力)

53 再処理工場との複合災害を無視するな

  わずか28kmの東海再処理工場で事故が起きれば対処不能となる

135p 重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係る技術的能力)

54 情報非公開で技術的意見は書けない

  パブコメで技術的意見を求めながらデータ等は非公開のデタラメさ

484p 6 審査結果)

55 安全・安心を保証できない規制基準

  事故を前提として審査書をまとめる不正義と不誠実

135p 重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係る技術的能力)

56 原発事故はリスク・ベネフィットに見合わない

  原発からの利益など一回の事故で吹き飛ばされる

135p 重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係る技術的能力)

57 原発は無くても電力不足などならなかった

  この7年余、原発がほとんど動かなくても電気は足りている

1ページ 1 はじめに)

58 東海第二につぎ込む資金は福島被災者に行くべきもの

  東海第二への無駄な資金投入で被災者への犠牲は増えるばかり

(1ページ 1 はじめに)

59 立地自治体だけでなく影響を受ける5000万人に意見を聞け

  風下地帯で最大限の影響を受ける人口規模は5000万人

(1ページ 1 はじめに)

60 既に設計から60年も経つ原発は廃炉にすべき

  設計時に想定していないことばかりで、後付けの対策には限界

(1ページ 1 はじめに)


※項目の後に記載の頁数は、「審査書」の頁数を示します。

※「審査書」やパブリックコメント募集はこちらを参照して下さい

日本原子力発電株式会社東海第二発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書に

関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について

http://www.nsr.go.jp/procedure/public_comment/20180705_01.html 

():ATWSとは

   原子炉の緊急停止(スクラム)が要求されたにもかかわらず、

   原子炉安全保護系の故障のために原子炉が緊急停止しない事態。

20180714

┏┓ 

┗■1.7/13原子力規制庁「東海第二原発の再稼働審査を問う」 

 |   交渉速報・4つの問題 

  |  「経理的基礎」について意見も出させない規制庁のひどい姿勢 

 |    「津波警報が出れば船舶は逃げる」から漂流しないとの 

 |     原電の主張をそのまま受け入れ調査等もしていない 

 |    東海再処理工場の事故を一切想定していない 

 |    ケーブル火災の発生を想定せず 

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)

 

 本日、衆議院第二議員会館でおこなわれた原子力規制庁との『東海第二原発の再稼働審査を問う!原子力規制委員会院内ヒアリング集会()-首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな-』で明らかになった問題点を速報(とりあえず4点)で送ります。

1.原子力規制庁は「経理的基礎」について勝手に「経理的基礎がある」と審査結果を出したにもか関わらず、今回のパブリックコメントにおいて対象から除外していたことが分かった。  

 大事な「経理的基礎」について意見も出させない規制庁のひどい姿勢に批判が集中した。 

2.原子力規制庁は、東海第二原発周辺の重要港からの船舶等の漂流については「津波警報が出れば船舶は逃げる」から、漂流しないとの原電の主張をそのまま受け入れ、調査等もしていない。多国籍の船員が往来している現実も認識しない態度に呆れる認識。

3.原子力規制庁は2.7kmしか離れていない東海再処理工場の事故を一切想定していない。「個別審査で爆発しないことを確認している」と荒唐無稽な説明に終始。想定外を再び繰り返す姿勢。

4.ケーブル火災についても火災の発生を想定せず、動力ケーブルにシートは巻かない、火災報知機と消火装置を設けていると回答。

┏┓

┗■1.あまりに酷い伊方3号機

 |  再稼働直前に故障する原発-川内(九州電力)も高浜(関西電力)

 |  伊方(四国電力)も…

 |  規制庁の甘い審査-規制庁交渉で痛感したひどい回答、

 |  特に原子炉の安全性

 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)あまりに酷い伊方3号機

 

 四国電力伊方原発3号機が12日に原子炉を起動した。プルトニウム燃料

(MOX燃料)を積んだプルサーマル炉でもある。

 8月9日長崎原爆の日に再稼働阻止全国ネットワークが規制委と交渉を

持ったが、その結果、一般とも科学ともかけ離れた認識に唖然とさせられ

た。これまでも何度も議論をしたが、今回は最も強くそれを感じることに

なった。担当した箇所での質問と回答に対し、特に原子炉の安全性に関す

る点についての批判を以下に述べる。

 

見出し

1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい

2.1000ガルに耐えられる?

3.マジックナンバー1.54倍

4.自然循環不成立時の過酷事故対策

5.注入圧力はわずか7気圧

 

 

1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい

 

 原子炉一次系に破損が発生すると流出する冷却材の流れに阻害されて自

然循環は成立せず燃料を冷却できないことは明確である。炉内の冷却材は

開口部に向かって流れてしまうからだ。

 自然循環は炉心燃料の熱により発生し、高温になった冷却材は出口配管

を通過して蒸気発生器に向かい、そこで二次系または空気(二次系が蒸発

していれば)により冷却されて比重の大きな冷却材になるので、蒸気発生

器細管を下り一次冷却材ポンプを経て入口ノズルから原子炉内に戻る。こ

れが自然循環の流れだが、何らかの原因により蒸気発生器細管、加圧器、

一次冷却材ポンプなどの何処か(計装系などの微少配管なども含めて)

漏えいが発生したら漏えい口から冷却材は噴出し、冷却材の流れは損傷部

に向かう一方的なものになる。

そのため自然循環は成立しない。

 

 その中でも漏えい箇所になる可能性の高い一次冷却材ポンプは、実は破

損が全くなくても電源が喪失しただけで漏えいが発生するやっかいな装置

である。

 ポンプには「シール部」という場所がある。ポンプ回転軸を伝って内容

物が漏れるのを防ぎ、軸受を安定させる装置だ。加圧水型軽水炉の一次系

にはループごとにポンプがあるので、伊方3号機の場合は3台ある。

 そのシール部は外から強い圧力をかけて「軸封水」または「シール水」

を押し込んでおり、そのおかげで隙間から冷却材が漏れるのを防いでいる。

この水圧は炉圧より高く157気圧以上で「充てんポンプ」というポンプに

より圧力がかけられている。しかし電動ポンプだから電源喪失と共に機能

喪失する。

 

 機能を喪失するとシール水を押し込めなくなり、内部の157気圧の冷却

材が漏れてくる。最大漏洩量は最も圧力が高い漏えい初期段階でポンプ

1台あたり毎時最大109トンと想定されている。(時間と共に圧力が下が

るので漏洩量は徐々に減少する。)

 シールの破損は、この漏洩量を増やす方向に影響すると思われるので、

真剣に検証をすべきなのだが、今回の漏えいが「シール水のみの漏えい」

だとして、何の検証も検討もしていない。安全側に立った態度とは到底い

えないのである。

規制庁は自らは事故原因調査もしていない。

 

 四国電力によると、格納容器耐圧検査において使用圧力の1.1倍をかけ

たところ、ポンプ軸封部のOリングに外部から圧力が掛かり変形、そのま

ま動かしたため軸受が傾き漏えいに至ったというのだが、これだとポンプ

3台とも起きない理由の説明にならない。個体差だと四国電力は言ったそ

うだが、それで済むのならば規制庁などいらない。原因と調査がいいかげ

んだと、全く予期しない原因があっても排除されていないので、運転中に

大規模な破たんを来しても未然に防げない。そのような事例は過去にいく

らでもあったではないか。

 

 典型的例を一つあげれば、軸振動の増大を甘く見て再循環ポンプを破壊

するまで運転し続けた福島第二原発3号機の事故がある。その前年に同型

機の1号機で起きていた損傷を見逃したことが、最終的に事故を未然に防

げなかった。

 こんな経験を山のようにしているのに、今回の規制委の稼働許可は、何

が起きても教訓にさえならない現実を見せつけている。

 電源喪失時には一次冷却材ポンプが冷却材喪失の大きな流出点になると

分かったのは福島第一原発事故の教訓である。それまでは抽象的には認識

されていたが、そもそも全電源喪失が長時間続くという想定そのものが

「想定外」なので、実態として対策されていない。

 

 では、福島第一原発事故後の今はどうなったのかというと、本質的には

何ら変わりはしない。

 ポンプはもちろん以前のままだし、冷却材喪失対策が、結局は消防車の

ポンプという。せめて炉圧と同じ圧力でも注水できる電源不要のシステム

を付けるべきであるが、対策は取られないままに加圧水型軽水炉が動き出

している。

 一つの方法は、沸騰水型軽水炉の原子炉隔離時冷却系統と同様の装置を

付けることだ。

 

 

2.1000ガルに耐えられる?

 

 愛媛県は、伊方3号機が中央構造線及び中央構造線断層帯のほぼ真上に

あることから、650ガルの基準地震動に大きな不安を感じたのであろう、

1000ガルの地震にも耐えられるのかと四国電力に問うた。そこで四国電力

は実力はもっとあるとして1000ガルを想定した「伊方発電所3号機耐震裕

度確保に係る取組みについて」と題する報告書を2015年7月付で県に提出

した。

 この、いわゆる「実力評価書」について8月9日に規制庁に問うた。

工事計画認可申請の計算とかけ離れた文書に、いったいどんな意味がある

のかと。

 

 1000ガルとは単純計算ならば、基準地震動の1.54倍の揺れになり、ただ

でさえ厳しい蒸気発生器細管や各種管台などが、そのままでは破損するの

ではないかと疑問を持つのは当然だ。

 ところが四国電力は、工事計画認可申請書にはない「実力評価」を持ち

込み、大きな揺れの力にも耐えきれるとする。実力評価とは「適用実績の

ある詳細評価」と記載しているが、実態は安全余裕をはぎ取り、実際に

取り付けている材料や、材料の強度評価や設置状況を組み込んで加算し、

耐震裕度を上方修正したものである。

 

 一見合理的に見えるが、材料欠陥や老朽化、あるいは設計、施工ミスな

どは一切考慮できないので、実力といいながら実態は計算上のカタログス

ペックでしかない。

 工事計画認可申請において厳しい計算条件を付けるのは、設置後に何十

年、場合によっては60年間も使う装置や配管類が、稼働中に老朽化しひ

び割れや減肉が起きたり、工事や施工に問題があって傷が付いていたり、

ありとあらゆ

る「不測の事態」を想定するからである。

 航空機の場合、空力強度計算だけで製造しても耐空証明と型式証明

(これがなければ乗客を乗せられない)を取れないのは、試験飛行などで

分かる欠陥が潜んでいる危険性を経験的に知っているからだ。

 

 

3.マジックナンバー1.54倍

 

 「1000÷650」これが1.54である。

 設置許可変更申請書において伊方3号機は650ガルを想定した。新基準適

合審査にあたり、基準地震動を570ガルから650ガルに引き上げたのだ。

 それでも不安だとした愛媛県が更なる対策を求めた。つまり1000ガル程

度にも耐えられるのかと問うた。これに四国電力は「耐えられる実力があ

る」と主張した。

 

 その根拠として四国電力は、650分の10001.54だから、1.54倍以上の

「裕度」があれば良いことにした。しかし工事計画認可申請書に書かれた

耐震裕度の中には、そのままでは1.54倍に達しない装置や機器類がいくつ

もあった。これでは1000ガルには耐えられないとの結論になる。

 そこで「実力評価」の出番である。計算根拠をいろいろ都合よく変える

ことで耐震裕度すなわち倍率に下駄を履かせたのである。

 工事計画認可申請の場合は、例えば材料の肉厚は「必要最小肉厚」で計

算する。設計製造時の材料の厚さが、運転中の腐食や浸食で失われ、ある

いはひび割れていても設計上許容される最小値になっているとして計算す

る。

 

 もちろん、そこまで減肉やひび割れが起きていることは、特に放射性物

質を内蔵する一次系では希かもしれない。しかし希でもあり得ることだか

ら、安全側に値を取り、それでも放射性物質を封じ込めることが出来るこ

とを条件としている。これが「工認の手法」である。

 

 しかしこれでは厳しい結果になるので、「実力評価」では、肉厚は公称値

つまり材料として納品されるカタログスペックの値を使う。もちろん使用

中の減肉やひび割れなど想定しない。

 当然ながら裕度は高い値になる。例えば蒸気発生器伝熱管の場合、650

ガルにおける「工認の手法」では基準地震動による発生応力値÷評価基準

(塑性変形[そせいへんけい]は起こすが破壊には至らない一定の値)

1.09倍(1.54倍以下)が、「実力の手法」では同じ計算で1.61(1.54倍以

)になるのである。

 

 当然、1000ガルを想定しても「実力の手法」ならば余裕があることにな

る。例えば蒸気発生器伝熱管の例では1.61÷1.091.48倍ほど耐震裕度

が増えるというわけだ。

 しかし「工認の方法」で計算すると0.7(1.09÷1.540.71)程度でしか

ない。これは破壊を意味する。

 

 すなわち蒸気発生器伝熱管は1000ガルの揺れには持たないのである。

 同様に持たなくなる装置類を四国電力の「伊方発電所3号機耐震裕度確

保に係る取組みについて」から読み取ると次の通り。

 抽出条件は、主要機器の中で「工認の方法」で計算し耐震裕度が1.54

を下回るものである。

 

 1.原子炉容器の管台(どこだか不明)、2.炉内構造物(ラジアルサ

ポート)、3.燃料集合体(制御棒案内シンブル)、4.原子炉容器支持構

造物埋込金物(スタッド)、5.蒸気発生器(管台)、6.蒸気発生器内部

構造物(伝熱管)、7.蒸気発生器支持構造物(支持脚)、8.蒸気発生

器支持構造物埋込金物(支持脚埋込金物コンクリート)、9.一次冷却材

ポンプ(軸受)、一次冷却材ポンプ支持構造物埋込金物(上部支持構造物

埋込金物基礎ボルト)、10.制御棒クラスタ(被覆管)、11.制御棒クラ

スタ駆動装置(タイロッド)、12.燃料取替用水タンクポンプ・原動機

(軸位置)、13.使用済燃料ラック(溶接部)、14.原子炉格納容器本体

(胴部)、15.アニュラスシール(根太)、16.格納容器排気筒(本体)、

17.タービン動補助給水ポンプ・駆動用タービン(弁箱)、18.その他配

管・サポート(具体的部位不明)、19.一般弁(具体的部位不明)、

20.主蒸気隔離弁操作用電磁弁(据付位置)、21.主蒸気安全弁(据付位

置)、22.制御棒(挿入性)、23.静的触媒式水素再結合装置(本体)

 

 これらが全て1.54を下回っているので1000ガルの揺れには耐えられな

いことになる。そのため実力評価などと下駄を履かせる手法を導入したが、

それで強度が上がるはずもない。

 規制庁の加圧水型軽水炉担当官は、この実力評価については法律で定め

られたものではないし、国に対して審査を求めたものでもないので、関知

していないとした。事業者がことあるごとに主張する「国のお墨付き」は、

「実力評価」については一切無いのである。

 

 

4.自然循環不成立時の過酷事故対策

 

 過酷事故対策(アクシデントマネジメント略してAM)の一つが「フィ

ードアンドブリード」つまり「減圧して注水」である。一次系の熱を逃が

す方法は二次系への熱の伝達だが、電源喪失状態ではポンプは動かないか

ら、炉心燃料で暖められた高温の冷却材が蒸気発生器の伝熱管に流れ込

み、そこで二次系の水または空気に熱を逃がし、炉心に戻ることで炉心

を冷やす。しかし伝熱管に気体が溜まれば自然循環は止まる。燃料が損

傷したりメルトダウンしたら大量の希ガスと水素が発生するから、気体

により自然循環は止まるのは誰にも分かる。

 

 その際に「フィードアンドブリード」を行うのだが、加圧器逃がし弁を

開けば自動的に冷却材喪失になってしまう。

 また、蒸気発生器の伝熱管に気体が溜まるほど炉心損傷が進んでいれば、

高温のガスがポンプシールや弁を破損させている可能性が高い。冷却材の

喪失はそういうところでも進行している可能性がある。

 

 問題は「水を入れる方法」である。

 ECCSは蓄圧注入系以外は電動ポンプを使うため、電源喪失状態では

入らない。蓄圧注入系も40気圧程度に下がらなければ入らない。高圧で漏

えいが続くような状態では、冷却材を喪失し続けていても補充は出来ない。

 

 原子炉が高い圧力のままで推移し、冷却材は抜けるのに注入できない

状態が長時間続けば炉心は露出しメルトダウンを引き起こすだろう。40

圧まで下げるのに加圧器逃がし弁を使っても、蓄圧注入系統にも限りがあ

り、タンクが空になれば効果を失う。もともとECCSへの電源が30分程

度で回復することになっているため、長時間の停電を想定していない。も

ちろんバックアップ電源があると主張するだろうが、福島第一原発事故で

は電源設備系統は地震により破壊されているから、長期間にわたり電源が

使えない状態を想定しなければ、またしても想定外になるだけである。

 

 

5.注入圧力はわずか7気圧

 

 さらにバックアップとして想定されているのは消防車だが、ポンプの注

入圧力は7気圧程度しかない。その圧力で消防用水配管に水を送ったとこ

ろで、炉心に入る保障もない。

 

 規制庁に対して「消防用水ポンプを使って冷却材を遅れることを実証し

たのか」と問うと、「稼働中の原子炉にそんなことは不可能である」と、実

証しないことをあたかも当然と、開き直った。これはおかしい。

 実証されていない装置を「安全設備」などと銘打って設置するようなプ

ラントはあり得ないことだ。最後に水が入らないとメルトダウンを避けら

れないといった段階で、実証性のない装置を使って水が入るなど、想定す

ること自体間違いだ。

 

 規制庁は「消防用水配管の部分、部分で注入できるところをテストして

いる」というが、そんな常圧で動かす場所をいくらチェックしても意味は

ない。

本当に厳しい場所、つまり一次冷却材の内蔵する150気圧になる場所に注水

できることを実証しなければ、AM設備などといえるわけがない。

 

 例えば同じAM設備である「ホウ素注入系」については定期検査ごとに

実際に注入できることを試験しているし、ECCSの設備についても注入

できることを実証試験で確認している。では、消防用水配管の実証性を試

験しないのはなぜか。実証できないからに他ならない。

 

 福島第一原発事故でも明らかに使い物にならない設備であることが「実

証」されてしまった設備を、AM設備であるとする規制委員会の規制基準

適合性審査は、茶番劇である。